山に行こう 山行記録 天城山

天城山

標高1406m・静岡県

1998年9月12日(土)曇り時々晴れ
日帰り 同行1名

●ワンポイント

曇ってたせいもありますが、展望はあまり良くありませんでした。新緑・花・紅葉など何かしらテーマのある時期に行かないとつまらないかも...?

●交通

往路JR川崎7:45 − 伊東9:48
バス(東海自動車)伊東10:10 − 天城高原ゴルフ場11:17

復路バス(東海自動車)天城高原ゴルフ場17:16 − 伊東18:25
JR伊東 18:38 − 川崎 20:45

●山行:(歩行時間4:12)

ゴルフ場11:30-万二郎岳・万三郎岳の分岐11:43-万二郎岳12:30-(昼食1時間)-万三郎岳14:40-涸沢分岐点15:20-万二郎岳・万三郎岳の分岐16:25-ゴルフ場16:42

●記録文

前日の天気予報によれば今日は関東一円晴れの様子。静岡方面も期待できるはずだ。しかし朝起きると意外に雲が多いので「なんだかなー」と思いながら、同行のBと待ち合わせしている川崎駅へ向かった。Bと合流し川崎から東海道線に乗る。運良く伊東行きが来た。普通電車なのに特急のような車両で、車中2時間楽していくことができた。朝の東海道線では、たまにこういう電車がやってくるようだ。車両の輸送もかねているのだろうか? 
電車に揺られるのも飽き飽きしてきた頃やっと伊東につく。改札を出てダッシュで天城高原ゴルフ場行きのバス停に向かった。伊東駅のバスターミナルは、バスが待ち客にケツを向けてアイドリングするような構造なので、みな排ガスにむせていた。バスが発車してからも窓から入ってくるのは排ガスばかりで、「とても山に来たとは思えない」とBと嘆きあう。土曜とあって車内は幼稚園の遠足やら、子連れ旅行やらで蜂の巣をつついたような騒ぎだ。引率の先生は子供のはしゃぎようにぶちキれるし、子連れおばさんは子供を野放しにするはで、しゃぼてん公園までは動物園のような騒ぎになった。しかし大室山までくるとほとんどの乗客が下車し、天城高原あたりでとうとうわれわれふたりだけになる。ここまでくると、風も心地よい。
バスの運転手にちゃんと終バス(休校日運転 17:16発)がくることを確認し、天城高原ゴルフ場で下車。あたりには数十台の車が駐車している。ほとんどがゴルフ客のようだ。ハイカー向けの駐車場は広いやつが別にあって、まばらに車がおいてあった。どちらかというと石楠花が咲く季節が楽しいコースなので、あまり登山者もいないのだろう。バス停から標高の高いほうに歩き始めると、運ちゃんが「登山口は道を少し下ったトイレの脇だよ」と教えてくれた。はじめ登山道は広く、所々登ったり下ったりが続く。沢が2ヶ所あって立派な木橋がかかっているが、水は涸れて苔むした石が剥き出しになっていた。15分程度で三叉路につく。右は万三郎岳へ、左は万二郎岳へ至る道だ。今日はまず左へ進み万二郎岳から万三郎岳へ登って、右側の道から帰ってくる周回コースだ。
万二郎岳への登りはしばらく緩やかで、所々道幅が数メートルになる個所もある。左側の木立の向こうに目を凝らすと、ゴルフ場の芝生が蛍光グリーンの異彩を放っていた。時折歓声が聞こえたりする。徐々に万二郎岳への登りがきつくなってきた頃、同行のBが悲鳴を上げた。見ると背中に3cmくらいの毛虫が勢いよく動いている。毛虫をはたいて、Bの腕を見ると2mm位の斑点が2列にきれいに並んでいた。なるほど毛虫に刺されるとこういう腫れ方をするのかと感心していると、Bの不興をかってしまった。幸い毒の弱い虫だったらしく、夕方には腫れは引いたようだ。
とそうこうしているうちに万二郎岳の山頂についた。あたりは樹林の中で展望がきかない。今回のコースは全体を通してほとんど眺望ゼロである。温暖な気候のためか、とにかくさまざまな種類の植物が繁茂している。頂上ではカップルが休んでいたがすぐ万三郎岳の方へ下っていった。われわれもここでは水を飲むだけにとどめ、万三郎岳方面へ5分ほど下り、展望のきく岩場で昼食にした。先客の老人が「今日は風が穏やかだ」と言う。いつもはもっと風が強いのだろうか? 遠く白い雲の上に富士山の黒い頭がぽっかりと浮かんでいる。万三郎岳方面から新たに雲が湧き上がり、麓は見えたが海は望めなかった。
ここから万三郎岳へは小ピークを一つ越えての登り返しだ。途中には見事なアセビのトンネルがあった。開花期には白い小さな花がつくそうだ。しばらくして、公園かと思うような平坦地を過ぎ、もうひと登り頑張ると万三郎岳山頂である。ここが伊豆半島の最高所だ。一等三角点もある。やはり展望はあまりきかず、木の間から富士山方面が少し見えただけだった。この閉鎖的な雰囲気は大菩薩嶺の山頂に似ている。一角には地元山岳会の備え付けのノートがあり、登山者が思い思いの足跡を残していた。
万二郎岳からわきあがって見えていた雲からとうとうぽつりぽつりと降ってきたので、下山することにする。素人ハイカー向けに「行くな」と表示のある涸沢分岐への急なくだりを行く。ここには"しゃくなげコース"という看板があり、見回せば確かに石楠花が多い。開花は5月で、アセビとあわせて見学すればさぞきれいだろう。涸沢分岐につくとゴルフ場(四辻)まで60分の表示があったが、実際にはその後アップダウンを繰り返す道で80分を要した。「行くな」と書いてあったわりには道標はしっかりしていた。
さて、余談になるが、登山口も近くなった沢で、いやなものを見てしまった。地下に埋設されたゴルフ場からの直径2メートルほどの排水管。これが涸れた沢に流れ込むようになっているのだが、その下にたまった水がとめどない灰色をしているのである。工場の廃液のようだ。いまどき多摩川の下流でもこんな色はしていない。何か有毒物質が混ざっているのだろうか? 帰りながらBと話したのだが、下山途中われわれは同じ地点で喉を痛くしていた。その辺りの道には「なぜこんなところに?」と思わせるようなパイプが所々剥き出しになっていた。また位置的にはゴルフ場の横にあたる道筋でもある。そういえば登山口が近くなるにつれて虫の類がだんだんいなくなっていったようにも見えた。これらの事実がどう結びつくのかはわからない。しかしこのような高所の開発が進み、森林や環境の破壊が進行していることは間違いなさそうだ。
ぞっとしながらバス停まで戻る。バスの時間まではまだ30分以上あるので、ビールでもとBがゴルフ場のフロントに買い物に出かけたのだが、登山靴・サンダルは立ち入り禁止だそうで、玉砕して帰ってきた。アルコールに飢えきったわれわれは、伊東駅で酒とつまみを補給し川崎まで一人あたりビール2本、日本酒2合を胃袋の中に収めることになった。
今回の山旅はあまり展望もきかないコースだったので、われわれにとってはやや消化不良の感があった。やはり天城山は石楠花の咲く季節に訪れるべきなのか。

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