山に行こう 山行記録 唐松岳〜五竜岳

唐松岳〜五竜岳

唐松岳(標高2696m・富山県/長野県)
五竜岳(標高2814m・富山県/長野県)

2004年7月23日(金) 晴れ〜2004年7月24日(土) 晴れ一時曇り
前夜東京発 テント1泊 単独
幕営地:五竜山荘

●写真

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●交通

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往路JR蒲田20:50 − 東京21:11
東京21:16 − 新宿21:31
さわやか信州号新宿高速バスターミナル22:30 − 白馬アルピコターミナル6:00

復路さわやか信州号エスカルプラザ15:16 − 新宿20:16
JR新宿20:27 − 東京20:40
東京20:42 − 蒲田21:02

●山行

1日目(歩行時間5:48)
白馬アルピコターミナル6:08-八方ゴンドラ6:23-ゴンドラとリフトで八方池山荘へ-八方池山荘7:26-八方池8:28-休憩12分-八方池発8:40-途中休憩10分-丸山ケルン9:58-休憩10分-丸山ケルン発10:08-唐松岳頂上山荘11:00-休憩9分-山荘発11:09-唐松岳11:24-休憩21分-唐松岳発11:45-唐松岳頂上山荘11:57-休憩16分-山荘発12:13-途中休憩30分-五竜山荘15:01
2日目(歩行時間5:20)
五竜山荘4:43-五竜岳5:37-休憩115分-五竜岳発7:32-五竜山荘8:25-撤収51分-五竜山荘発9:16-途中休憩20分-西遠見山11:10-休憩5分-西遠見山発11:15-途中休憩10分-小遠見山12:29-休憩15分-小遠見山発12:44-白馬五竜テレキャビン13:39

●記録文

●1日目

とりあえず先週の丹沢縦走で、一通り体が出来上がってきつつはあるのだが、今夏計画している南アルプス南部の山行に出かけるには、まだ体力的に不安が残っていた。ここらで一度2500m以上の高度まで体を上げて、仕上げをしておきたい。豪雨をもたらした梅雨前線も消滅し、北陸地方もようやく梅雨明けしたということなので、さわやか信州号の夜行で北アルプスまで行って、唐松岳〜五竜岳を縦走することにした。プランは八方尾根から上がって、唐松岳経由で五竜山荘にテン泊し、翌日五竜岳を往復して遠見尾根を下る、というもの。帰りは、白馬五竜から往路と同じくさわやか信州号で新宿に戻る予定。
7/22に仕事を終えて一度帰宅。風呂に入って飯を食う。Bの風邪がうつったのか、体調がイマイチなので風邪薬を飲んだ。熱波の押し寄せる中、昨夜準備したザックを背負って新宿駅に向かった。重さはおよそ18K。先週のトレーニングのせいか、それほど重いとは感じなかった。
新宿の高速バスターミナルで受付を済ませる(往復9400円也)。平日というのに、白馬行きのバスは3台も出た。車内は満員。発車まで冷房が入らないので、地獄のサウナ状態だった。逆に途中は冷房が効きすぎで明け方は寒いくらいだった。2箇所の休憩の後、穂高駅、扇沢、今回の下山予定の白馬五竜で人を下ろして、八方尾根の麓、白馬バスターミナルに着いた。時刻は6時過ぎ。少しは眠れたのか、体調は心配していたほど悪くない。なんといっても青空が広がる向こうに、すでに後立山の稜線が見えているのが、一番のカンフル剤だ。
ターミナルのトイレを借用し、八方ゴンドラに向けて歩き出す。ペンションや旅館が立ち並んでいるが、まだ時間が早いのかひっそりしている。このあたりが混むのはスキーシーズンの冬なのかもしれない。八方ゴンドラにつくとすでに30人程度の待ち行列ができている。切符が売り出されるまでに続々と人が集まってきて、中学生やおばさんハイキングクラブの団体もあわせて200人程度の人が行列することになった。料金は八方池山荘まで1800円也。うち400円は荷物料金だ(10K以上)。
混雑を見てか運転は7時少し前より開始。ゴンドラと2本のリフトを乗り継いで八方池山荘まで上がる。途中、リフトの足元がお花畑になっていて、特に大量のシモツケソウが咲いているのが見ものだった。右手には白馬三山がくっきりとその稜線を見せている。眼下には牛の放牧場もあって、高原情緒あふれるところだった。
八方池山荘前は登山者でいっぱい。準備運動は下で済ませたので、すぐに出発する。快晴とはいうものの、早く上がるに越したことはない。八方池に白馬三山が影を落とす様を写真に収めたい、という考えも少し気を急かせるようだ。道は緩やかに折りかえしながら登っていく。視界をさえぎるものはなく、白馬三山の優美な姿を眺めながらの開放的な尾根歩きだ。あたりはお花畑になっていて、ニッコウキスゲ、キンコウカ、イワイチョウ、ウツボグサ、ハクサンシャジンなどが花期を迎えていた。
途中トイレがあったりするが、この辺り、それだけ人出が多いということなのだろう。やがて唐松岳〜不帰嶮〜白馬三山の稜線が真正面に見える箇所に出た。振り返ると雨飾や妙高あたりも見えているようだ。山名の案内板があって、晴天の本日はまさに全ての山を見て取ることが出来た。
そこから少し下った先が八方池だった。天狗ノ頭から白馬三山への連なりが水面に静かに影を落としている。実に贅沢な眺めだ。あたりにはチングルマやタテヤマリンドウも咲いている。看板にあるモリアオガエルの鳴き声も聞こえてくる。人出もまだ少ないし、こんなところをすぐに去ってしまうのはもったいないので、腰をおろして朝食にした。
いくら見ていても飽きない眺めだけど、まだまだ先は長い。しっかり目に焼き付けたのち八方池を出発した。そこからしばらくは低木まじりの道をじりじりと高度を上げていった。ミヤマムラサキ、クモマミミナグサの花も見つけた。日が高くなり始めたので、汗が噴き出てきた。日よけに麦藁帽子をかぶった。時折展望が開けると、左手にこれから目指す五竜岳が見えるようになった。名前にふさわしい無骨な山容だ。これからあそこまでいくのかと思うと、わくわくした気分になる。五竜岳の向こうには、鹿島槍がひょっこり双耳峰を覗かせていた。足元を見るとミヤマキンポウゲが黄色い花をそこかしこに咲かせている。
扇雪渓と呼ばれる場所でひと休憩。大きな雪渓が残っているので、気分的にかなり涼しい。中学生の集団登山もここで休憩を取るようだ。羊羹をかじって補給した。そこから更に急坂をこなして行くと、尾根に出た。ここが丸山ケルンのある場所らしい。少しガスが上がってきはしたものの、五竜岳から白馬三山が見渡せる好展望の場所だった。間近に見える不帰キレットと、その谷に横たわる大きな雪渓のコントラストに、山の造形の深さを感じさせられた。
そこからミヤマキンポウゲとシナノキンバイが咲き乱れる中を緩く登って行く。チングルマやコイワカガミも咲いている。やがてイワツメクサの白い花も現れてなんとなく道も岩がちになってきた。丸山ケルンから4〜50分たったろうか。ある岩角を乗り越えたとき、急に目の前に小屋が現れた。唐松岳頂上山荘にたどり着いたようだ。丁度ヘリの荷揚げをしているらしく、進もうとすると向こうにいるヘルメットの人にしばらく待つよう制止された。風圧がすごいらしい。
小屋の前に荷物をデポして唐松岳へ出発しようとすると、またもやヘリの来襲。どうやら小1時間はこの調子らしい。小屋の中に荷物ごと退避するように言われる。ヘリの起こす風で小屋のドアががたぴしと揺れた。再びヘリが去るのを待って、急いで唐松岳との鞍部のほうへ移動した。影響の無い地点にザックを置いて、唐松岳をピストンする。空身のまま小さな岩屑を踏みながら登って行くと、15分ほどで唐松岳山頂に着いた。
展望は申し分なし。真正面に五竜岳がずんぐりとした巨体を横たわらせている。今まで見えなかった剱・立山連峰も姿を現して、その黒々とした山肌が見えた。毛勝三山も始めてその名を知った。眼下の谷はまだ少なからず雪に埋もれている。小屋の荷揚げも相変わらず続いており、ヘリの飛ぶ様子を上から俯瞰するという、珍しい体験もした。白馬三山の辺りは雲がかかって見えなくなっていたけど、天狗ノ頭までキレットが続く様子を眺めることが出来た。山頂では、祖母谷温泉から上がってきた一団が、八方尾根とは比べ物にならないほど大変だったとふれまわっていた。向こうを見ると、五竜岳方面に進み始めた30人ほどの一団がいきなり渋滞しているらしく、ここから先、岩場があることが想像できた。まだ時間もあるので、この集団とは出来るだけ距離をおいて進むことにする。やがて、中学生の集団が上がってきたので下山した。
ザックの所まで戻り、パンを食べて補給。水場がどうなっているのか気になったのだが、荷揚げで忙しそうなので、小屋には寄らず五竜へと出発した。ちなみにここのテント場は、少し降った位置にあるので、小屋との往復は若干不便に見えた。「2時くらいになると下の雪渓で水が取れるようになる」と話している声も聞こえた。辺りにはハクサンフウロが紫色の花をつけていた。
牛首から大黒岳にかけては岩稜となった。ストックをしまい、鎖場を慎重に通過して行く。所々イワツメクサやチシマギキョウが咲いていて、心が和む。もちろん前方には五竜岳の雄姿が聳えていて、飽きることが無い。それほどの苦渋も無く岩場の通過は終了。道はいったん鞍部までくだり、次の小ピークを越えるとハイマツ帯の緩い登りとなる。少し疲れたので、途中低木の蔭に入って、しばらく休憩。靴を脱いで足裏をもむと生き返るようだった。前方を見やると、五竜山荘への登りを集団登山が連なって行く。それを見届けてから腰をあげて出発した。付近ではウラジロナナカマド、コバイケイソウ、ウサギギク、ヨツバシオガマなどの花を見ることが出来た。
この時間になって五竜岳にもガスがかかってきた。雲は少し黒味がかっていて、「雷になると嫌ですね」と前後して歩いていた人と話しながら行く。偽のピークに騙されて、それをまた別の登山者と愚痴りあいながらも、お互い笑顔なのが山の不思議だ。そこから、もうひと頑張りしたところで足下に五竜山荘が見えた。小屋の裏手に降って行くと、斜面がお花畑になっていて、クルマユリ、ミヤマキンポウゲ、チシマギキョウなどが咲き乱れていた。その斜面の下部には大きな雪渓が残っている。
小屋に入って幕営の手続きをする(500円也)。明るい応対の小屋だ。水は1リットル100円で外の蛇口から汲んでよいとのこと。小屋泊の人ならタダらしい。ともあれ、冷蔵庫で冷えたチューハイを500円で購入。テン場に下りて早速飲みながら設営する。うーん、疲れのせいか、それとも標高が高いせいか、酔いが廻ること! 設営を終わり、横になって更に持参の剣菱をあおりながら、ポテトチップやせんべいをかじる。時折ガスの切れ間から覗く五竜岳の岩壁がかっこいい。米が炊けたのでレトルトのハヤシライスをかけて満腹となる。腹が膨れたら眠くなったので、テントに入って寝た。
次に眼がさめたのは夜中の12時で、隣のテントのカップルが騒ぎ始めたため。こやつらといったら真夜中に騒ぐだけでなく、風で飛ばしたビニール袋も拾わず撤収するというノーモラルな二人だった。言うまでも無く山に来る資格なし。
●2日目

またもバカップルの騒ぐ声で眼がさめた、と思ったら、時計を見るともう4時前だ。そろそろと起き上がり、五竜ピストンの準備を始めた。ウィダーインゼリーを一気に喉に流し込む。食欲の無い朝、この流動食は重宝だ。テントから顔を出すと、辺りは灰色のガスに包まれている。予報は晴れなので、日の出とともにこのガスは上がるに違いない。ヘッドランプでトイレに出かけると、昨日の30人集団が、小屋前でもう出発の準備を始めていた。それとは間隔をあけてテン場を後にした。
しばらくは砂礫を踏みながらの登り。夜も明けて、もうヘッドランプはいらないが、まだガスは晴れてこない。目覚めきっていない体なので歩みも遅い。ところが、歩き始めて10分ほど。ガスが晴れる瞬間は本当に一気にやってくる。さあっと霧が引いて行って、辺りはあっという間に雲海の上に飛び出した。東にご来光が輝いて、五竜岳の岩壁が朱色に染まっている。昨日歩いた唐松岳や、白馬三山も雲海の上に浮かんでいる。皆足を止め、そこかしこに歓声が上がっていた。
ガスが上がったことで、山頂を目指す気持ちがぐんと高まった。体が目覚め、知らず知らずのうちに歩くスピードも増している。鹿島槍も岩場の向こうに見え隠れし始めた。途中で、休憩中の集団登山を追い抜いた。岩角を乗り越え、小さな鎖場をこなすと、五竜岳の山頂部に出た。岩場を少し先に辿るとその最高点に着いた。
山頂からの眺めは実に雄大だった。一番近くに鹿島槍、振り返れば唐松〜白馬三山、正面には剱〜立山の連脈が見える。そこから左に目を転じると、薬師・水晶・鷲羽・赤牛など、去年の山行を思い出させる山々が遠くに見えた。鹿島槍の右肩には槍ヶ岳の穂先も見えている。これらの山々が朝の光の中で刻々とその姿をかえて行く様を2時間あまり、飽きもせず眺めていた。もちろん、ジンをちびちびとやりながら。その間、昨日知り合った人たちなど、何人かの人と楽しく会話することも出来た。
充分すぎるほど五竜岳の山頂を堪能しテン場へと戻る。途中後ろを振り返ると、強い夏の日差しを浴びた五竜岳の岩壁がまた一段と荒々しかった。
五竜山荘のテン場出発は9時過ぎ。下山は約4時間の行程だ。帰路のバスは15時半なので、ゆっくり行っても充分下で風呂に浸かれる、と計算する。小屋の裏手を登って遠見尾根に入った辺りで振り返ると、五竜岳の姿はより迫力のある形に見えた。なにやら雪の白いマントをなびかせたジェネラルのようだ。一方、遠見尾根の下部を覗うと、全体はほぼガスに覆われている模様。ここより先の大休止は無意味なものに思えたので、ここでいきなり食事にした。白馬三山と五竜岳を眺めながらの贅沢な梅干茶漬けだった。
そこからしばらくは、急斜面のくだり。見上げるたび、五竜岳が徐々に形を変えながら遠ざかって行く。一帯はお花畑となっていて、確認できただけでもクルマユリ、コバイケイソウ、チングルマ、ハクサンフウロ、ミヤマタンポポ、コイワカガミ、ミヤマダイモンジソウ、ミヤマアズマギク、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、アオノツガザクラ、モミジカラマツ、ミヤマキンバイなど多数の花が花期を迎えていた。随所で写真を撮るため立ち止まり、歩みも思わず遅くなる。このあたりから下から上がってきた登山者とすれ違うようになった。
西遠見から大遠見にかけては、背丈の低い樹林の中のアップダウンとなった。ガスの間から時折顔をのぞかせていた五竜も、途中からまったく見えなくなってしまった。晴れていれば展望のよさそうな道なのだが...道にはところどころ池塘があったり、ぬかるんでいたりするところもあった。標高が下がり、日が高くなったことで、降りながらかなりの大汗をかく。標識がほとんどないので、現在地のつかみづらい道だった。途中ショウジョウバカマやアカモノの花を見つけた。
中遠見へは急な上り坂。再び軽く降って、また登った先が小遠見で、狭い山頂には日帰りのハイカーが休憩していた。下界も近い。ガスもだいぶ厚くなってしまい、まったく展望は望めない。時間を見ると12時半すぎ。疲れた足を揉み解しながら、最後の休憩を楽しんだ。ここからアルプス平まではおおよそ1時間の道のりだ。
ハイカーとすれ違いながら快調に降って行く。小雨もぱらついたりするが、ひどくはならずすぐに止んだ。やがて、ケルンやリフトが見えると、ゴールが近づいた。山野草園を通ってゴンドラ駅まで観光客の中を下った。あたりは手入れされた人工の高山植物が咲き乱れており、ゴンドラで上がってきた人が三々五々鑑賞している。花は山で充分堪能したので、ここは速攻で通過。ゴンドラ前に着くと、昨日から前後して歩いていた人がちょうど休んでいたので言葉を交わす。北アルプスに来ると必ず関西の人と仲良くなってしまう。
あとはビールを飲みながら白馬五竜テレキャビンで一気に麓まで降りた(片道1040円也。内200円は荷物料金)。なかなか高度感のあるゴンドラだった。降りてすぐ、麓のエスカルプラザで風呂に入った(600円也)。やはり冬がシーズンとのことで、風呂もガラガラ、プラザ内もガラガラだった。バス待ちの間、EPSONのデジカメプリントキャンペーンで白馬の写真コンテストをやっていたので、今回の山行の写真を応募した。
バスは15分ほど早くエスカルプラザ前に到着。座席表を見ると乗車率は半分程度で、ゆうゆう座れて帰ることができた。酒を飲みながら、今回の山行の余韻に浸る。扇沢ですべての乗客を乗せ終わり、しばらくすると一時雷雨になったがそれもすぐ上がって、高速道路から八ヶ岳を望むことができた。2箇所の休憩の後、新宿には20時過ぎに到着した。渋滞もなく快適に帰ることができたが、帰りもバスに頼ると、情緒には欠けるかもしれない。酔いも醒めて、東京の街を家路についた。

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