山に行こう 山行記録 御前山

御前山

標高1405m・東京都

1998年11月14日(土) 晴れ
日帰り 単独行

●ワンポイント

大ブナ尾根のカタクリが可憐。4月上旬が見ごろです。同じ頃奥多摩湖岸の桜もすばらしいです。景色は山頂よりも惣岳山との間のベンチの方がよいので大休止ならこちらで。ちなみに奥多摩湖からの登りはなかなか急坂です。

●写真

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●交通

往路JR蒲田5:48 − 川崎5:51
川崎5:54 − 立川6:50
立川7:08 − 奥多摩8:12
西東京バス奥多摩駅8:53 − 奥多摩湖9:10

復路西東京バス境橋15:36 − 奥多摩駅15:50
JR奥多摩16:06 − 立川17:20
立川17:24 − 川崎18:20
川崎18:26 − 蒲田18:31

●山行:(歩行時間5:03)

奥多摩湖9:18-サス沢山10:28-惣岳山11:42-(休憩35分)-御前山山頂12:46-(休憩5分)-避難小屋13:00-体験の森入り口14:02-栃寄14:32-境橋15:01

●記録文

この土日は11月半ばだというのに気温は20度以上、快晴の行楽日和ということだったので、どこに行こうか迷った挙句、まだ登っていない近場の山ということで、奥多摩三山(大岳山・御前山・三頭山)のひとつ御前山にいくことにした。今年はどこも紅葉が悪いが、果たしてここはどうだろうか? 立川から出る奥多摩行きの電車は同じくこの晴れに触発された登山客で満員。ほとんどはその荷物から想像するに雲取山に一泊する人たちで、案の定、奥多摩から鴨沢に向かうバスは増発されて2台になったにもかかわらず超満員のようだった。急ぐ旅でもない私は40分ほど待って次の臨発の奥多摩湖行きに乗る。これに乗った乗客は軽装のハイカーばかりでゆったりと座っていけた。
下山予定の境橋には何も店がないので、奥多摩湖の売店で帰りのバス待ち時間に飲む日本酒を購入した。どうせ1時間に2本ぐらいしか通らないバスだし、これがあるのとないのとでは大違いだ(笑)。小河内ダムの辺りは園地化されており、近場の紅葉を見学に来た観光客が朝から記念撮影をしていたりする。ここから御前山に登るには小河内ダムの堰提を渡る。左側は100m以上はありそうなダム壁、右側は奥多摩湖の意外に澄んだ水面で、白鳥が一羽泳いでいた。それにしてもものすごい落差だ。もし今このダムが崩壊したら、と思うと少し緊張した。堰提の真中辺りでは、水道局がダムの見学者を募っていた。対岸に渡って朝日を背にすると石尾根につながる斜面の紅葉がそれなりに美しい。空気が透明で、今日の山上からの眺めに期待がふくらむ。
御前山への道標にしたがって園地のトイレの前を過ぎ階段を登る。展望台を過ぎるとここからが大ブナ尾根への取り付きでいきなりけっこうな急斜面だ。最近は雨も降らないので地面はざれざれ。木の幹につかまりすべるのをこらえながら高度を稼いでいく。右手は奥多摩湖で木間からちらちらと水面が見える。足元から湖の方へ石が落ちていったが、かなり下のほうまで転がる音が聞こえた。1時間ほど頑張ると何も標識のないサス沢山につく。避雷針があってその辺りまで踏みこむと、奥多摩湖・石尾根・鷹ノ巣・雲取・奥秩父・大菩薩方面への眺めがすばらしい。こうしてみると奥多摩湖周りの斜面がかなり急激に水面へと落ち込んでいることがよくわかる。登山道も急になるわけだ。大気の透明度とそれに比例した見晴らしに大満足、地元のパン屋で購入した胡麻ラスクをかじって一息つくと再び登りにかかった。
傾斜のゆるくなった道を行くと、今度は左手に本仁田山・川乗山・ソバツブ山・三ツドッケとつらなる山並がくっきりと見えた。三ツドッケは日原から登る渋めの山だが、山頂の避難小屋辺りに一泊して静かな山を歩くのもよさそうだなー、と想像したりしている。そんな景色が見え隠れしているうちに、妙に平らで明るい場所に着く。あまりに暖かいので思わず腰を下ろして休憩してしまった。あたりには小さなおんぶバッタが何匹もひなたぼっこしている。日溜りとはこんなところを言うのだろう。本当に気持ちいい。そしてここから30分ほど、また急激な登りが惣岳山へと続いた。時折休みながら振り返ると石尾根の眺めが相変わらず心を和ませてくれる。何とか急斜面をよじ登ると惣岳山の頂上に着いた。樹林に囲まれていてあまり展望はきかないので、写真だけ写して、御前山とのコルへとくだる。この辺り一帯では春にカタクリが赤い花をつけるそうで、むやみに踏みこまれないように地面が保護されていた。
御前山の山頂に至るまでにはベンチが2ヶ所ある。山頂よりもここのほうが展望がいいらしいので、私は一つ目のベンチで昼食にした。前が開けているので石尾根から川乗山方面への眺めが抜群だ。例によってラーメンを食べていると、年配の登山者に話し掛けられた。それによるとこのベンチではカタクリが咲くころになると大宴会が催されて大変だそうで、そんな集団とは山道ですれ違うのも一苦労だと、そのへんのまずいマナーを彼は嘆いていた。まーともかくもやってきた登山者には場所を譲りながら昼食を済ませ、再び山頂を目指す。指導標には、ここから山頂まで300mとある。あとひとがんばりだ。途中にはもう一箇所ベンチがあってここからは富士山や大菩薩方面の眺めがよさそうだったが、あいにく逆光でかすみがかかって鮮明度はいまいちだった。
ベンチのたくさんある平たい山頂は30人ほどの登山客が思い思いに昼食をとっていた。中には白人のグループが複数いたので、英語のガイドブックでもあるのかな、とか、東京都が紹介しているのだろうか、などと想像する。人も多いし写真だけ撮って下山にかかった。今日は山頂直下の避難小屋を通って栃寄の集落から境橋に下ることにする。避難小屋への分岐になる十字路にはマウンテンバイクの一団が休んでいた。アメリカでハイキングしたときはよく見かけた光景だが、日本で見たのは初めてだ。しかし急坂を登ってきた私は、いったいどこを自転車で走るのか不思議になった。左手に少しいくと避難小屋がある。体験の森の延長にある効果か、かなりきれいな造りだった。トイレを拝借し流水で顔を洗ったらすっきりした。
右手に大岳山を見ながら栃寄へ下山する。この辺りは東京都造成による体験の森と呼ばれるところで所々休憩所やら展望台があったりする。想像していたより自然のままの景観が保たれていた。展望もなくなり山の懐に入っていくと北面にあたるので日差しも途絶え、寒風が山から吹き降ろしてくる。不意にくしゃみが出たりして辺り一帯に響き渡る。道はやがて林道と交差するが、旧登山道も残っているのでそちらを歩いた。途中には椎茸栽培や植林の解説板があっておもしろかった。
体験の森の入り口につくと栃寄の手打ちそばの看板が! 食い意地のはった私は登山道を離れ林道で栃寄を目指した。しかしついてみるとなんと行列ができていて、待つのもなんだし、空腹をなだめつつ次の機会に譲ることにした。こんな山中でも行列かー、と思ったが、客は登山客というよりも車でここまで入ってきた観光客がほとんどのようだ。そういえばTV番組で取り上げられていたような気もするし、意外と有名なのかもしれない。栃寄には他に”栃寄森の家”があって宿泊もできるようだ。なんと大人が素泊まりで2000円也。安い! ここでは自然教室なるものが開かれていて、椎茸栽培・植林・木彫りなどが体験できるらしい。”体験の森”の”体験”たる所以だろうか。休みを利用してやってくる家族連れで、思いのほか車の往来も激しい。ぶんぶん行く車を横目にここからは舗装道を一気に境橋まで下る。運悪く境橋ではバスが行ったばかりだったが、ザックには日本酒がある。やはり買っておいて正解だったとほくそえみつつ今日の祝杯をあげた。くーっ、やっぱりうまい。青梅街道は時折渋滞するほどの混雑ぶり。しかしこっちは酔い酔いだ。30分はあっという間だった。やってきたバスは登山客ですし詰め状態。なんとか乗せてもらうが、もはや酔っ払いの私に奥多摩までの道のりはさほど長いものではなかった(笑)。

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