山に行こう 山行記録 金峰山

金峰山

標高2599m・山梨県/長野県

1998年10月9日(土)〜10日(日) 快晴
テント泊 同行1名

●ワンポイント

廻り目平のキャンプ場は夜中に車でやってきたり、夜通し騒ぐオートキャンパーが多くてちょっとお勧めできません。ただし、金峰へは大弛峠から登る人が多いので、登山自体は静かなものでした。シャクナゲの咲く頃にも登ってみたいものです。

●写真

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●交通

往路JR東京9:12 − 佐久平10:22(あさま505号)
佐久平10:30 − 信濃川上11:45
川上村役場バス信濃川上13:22 − 川端下13:58

復路川上村役場バス川端下14:20 − 信濃川上15:00
JR信濃川上15:24 − 佐久平16:35
佐久平16:54 − 東京18:12(あさま522号)

●山行

1日目(歩行時間1:25)
川端下14:00-廻り目平キャンプ場(金峰山荘)15:25
2日目(歩行時間6:51)
廻り目平5:30-砂防提6:24-金峰山小屋8:14(休憩10分)-金峰山8:47(休憩)9:35-金峰山小屋10:08(休憩5分)-砂防提11:37-廻り目平12:29(撤収)13:01-川端下13:56

●記録文

10/9(金)は体育の日の代休で仕事が休みになったので、これを利用して金峰山へ登ることにした。廻り目平をベースにして一泊のピストン登山だ。
世の中は平日とあって朝の京浜東北線は混雑していた。蒲田始発の電車を待って、座って東京まで移動する。東京からは9:12東京発の長野新幹線に乗車。下手な旅客機より快適な広い座席に驚く。乗務員の対応も他の路線より一段上だ。やはり長野オリンピックの力だろうか? あっという間についた佐久平で下車すると、地名どおりあたりはかなりだだっ広いところで、これでも新幹線の駅か? と疑ってしまう景色だった。小海線のホームは改札のない無人駅である。観光客もまばらな平日のワンマン電車に揺られて収穫前の黄金色の稲穂を眺めながら信濃川上を目指す。
12時前に信濃川上に到着。駅の窓口は川上町がJRから委託されて業務をこなしているようだ。おばさんが一人で働いている。川上町の収入になるのでできるだけここで切符を買ってくれ、という張り紙があった。駅前には秩父多摩国立公園の概念図がある。金峰山をまたいだ向こう側が、大菩薩や乾徳山で馴染み深い塩山につながっていることがわかる。それにしても「ここまで来てもまだ秩父多摩か?」と、同行のBと首をかしげあった。バスの待ち合わせ時間が一時間半ほどあるので、近くの「ひぐれ食堂」でカツカレーを食べる。蟹江敬三のサインが飾ってあるのがナゾ(?)だった。
川端下までのバスには一見して登山者とわかる中年の男性が2人。この時間なので甲武信岳の登山口になる途中の梓山では誰も下車せず全員川端下で降りた。われわれ二人がはじめに歩き始めたのだが、他の二人が反対方向に進んでいくのに気づき、地図を確認すると反対に進んでいたらしい。高いほうに進んでしまうのが性癖なのだろう。廻り目平に行くには鳥居の見えるのと反対方向へ進むのが正解である。余談だが川端下にはジュースの自販機が一つとタバコ屋くらいしか見当たらなかった。
川端下の集落を抜けると廻り目平への広い車道に出る。小川山とそこから廻り目平に落ち込んでいる岩峰がキャベツ畑の向こうに見えてきた。大弛峠を経て塩山へ向かう林道と廻り目平キャンプ場へつながる道との分岐には蕎麦屋が一軒営業している。川端下から約1時間半の車道歩きで川上町営の廻り目平キャンプ場の金峰山荘に到着した。なかなか立派な山荘だ。風呂もあるし、土産物や酒も売っている。ここは焚き火も可能なのでバーベキュー用の炭も売っていた。フロントで一人500円の幕営料金を払う。ちなみに入浴は300円だそうだ。今回は利用していないので、中がどんな様子かは不明。キャンプ場はかなり広く200張は張れるそうだ。平日の午後とあって、目に付くのは10張ほどだった。ここまで車で入れるのでほとんどがオートキャンプらしい。みな一様にバーベキュー用の大型コンロを広げている。われわれは奥まったところを選び、ひっそりと設営した。設営を終えると雨がばらついてきたが15分ほどでまた青空が現れたのでほっとした。夜は持参の酒を飲みながら雑炊を作った。周りが起きているのに寝るのも何なので、山荘で炭を買って9時くらいまで焚き火をして暖まってから寝た。東京で仰ぐのと違う星空がそこにはあった。夜中12時ごろ目が覚めると大騒ぎをしているグループがいる。こんな時間だというのに、ペグを打つ音が方々から聞こえてくる。そんな状態が4時過ぎまで続いた。深山ならこうはいかないだろうが、里のキャンプ場はこういうものなのかと思った。自然に囲まれてテントの中で寝る恐怖や孤独感を、今回は味わうことがなかった。
4時起床。この時期になると4時ではまだ暗い。冬の星座、オリオン座がくっきりと見える。月明かりを頼りに、朝飯を準備する。ダウンのジャケットを持ってきた僕は暖かかったが、同行のBは寒くて起きられない。朝飯は山荘で買った野沢菜茶漬けを食べた。実はこれはいわく付きの朝食で、本当は雑誌に載っていたメニューのチーズフォンデュをするつもりだったのだが、チーズを自宅に忘れてしまったのだった。予備のご飯があったのでなんとかしのぐことができた。持ってきたフランスパンのことを考えるとカナシイ気分になったが、野沢菜茶漬けもなかなかいけた。要するに山では何でもうまいのである。朝食を終えると不要な装備をすべてテント内において、5:30にキャンプを出発した。テントの数は夜中の間に激増している。道理でペグを打つ音が朝まで続くわけだ。
ここからしばらくは西股川左岸の林道歩きになる。この川はいずれ千曲川に注ぎ込む急流だ。車止めのゲートを通り過ぎて激しい水音を聞きながら行く。紅葉は7分ほどすすんでおり、振り返ると日本離れした岩峰に朝日が反射して、形容しがたい景色を生み出している。途中には右手の小川山のほうから台風で崩壊したという土石流(?)の跡地があって、自然の力に愕然とさせられた。林道が終わると、奇岩奇石の続く川床に所々踏み込むような形で砂防提までの道が続く。増水時は注意が必要な個所だろう。
砂防提にたどり着くと木で組上げた橋で川の渡渉になる。ここから中ノ沢沿いに金峰山への本格的な登りが始まる。道標にあるコースタイムは、金峰山小屋へは2:10、山頂まで2:30となっていた。まだ半分も紅葉していないカラマツの下を登っていく。今年はどこに行っても紅葉が遅いような気がするが、気のせいだろうか? 8月の冷夏やら、九月の暑さ、雨の多さなども影響しているに違いない。これを書いている間にも、10月半ばだというのに最高気温が27度の日があった。「最終水場」の表示が現れると、道は沢を離れて右手に登るようになる。ここで顔を洗い気を引き締めて、さらにきつくなる登りに取り掛かった。うっそうと広葉樹が生い茂った辺り。まだ山の端から完全に日が昇りきらないため道は暗い。所々にみずみずしい葉色の石楠花が目に付く。1時間ほど登ると樹相はマツだけの薄暗い森に変化した。尾根に出たのか平らな道が現れるようになると、木々の間から朝日を背にした金峰山が神々しく輝いて見える。ここで本日はじめての登山者と遭遇。多分金峰山小屋に泊まったのだろう。ゆっくりと下っていった。徐々に背丈の低くなる樹林の中をがんばると、ふっと金峰山小屋の前に飛び出す。今日のような快晴の日、ここからの八ヶ岳の眺めは最高だ。小屋はたまたま最後の宿泊者を送り出したところらしく、出てきた主人がコーヒーをご馳走してくれた。中は小綺麗な様子。4人ほど若いアルバイトがいた。宿泊は2食付きで5千いくらか(忘れた)と書いてあった。親父さんにコーヒーのお礼を言うと、今度はゆっくりおいで、と声をかけてくれた。金峰山頂へはあと20分。森林限界に達して視界の開けたガレ場をあえぎながら登っていく。山頂は近いようで遠い。途中ガンコウランの実があったのでつまんでみたが、ここのはちょっと苦かった。
山頂からの眺めはまさに絶景である。近くに小川山、瑞牆山を俯瞰し、遠くには八ヶ岳・南アルプス・富士山を雲上に望むことができた。大満足である。山頂にははじめ10人ほどの登山者がいたが、大弛峠のほうから次々に人が登ってくる。われわれは記念写真を撮って端のほうで湯を沸かした。2599mという高さなので、じっとしているとかなり寒い。湯もなかなか沸かない。そうこうしているうちに五丈石に何人かが取り付いて登り始めた。山頂から五丈石を見ると五丈石のほうが標高が高いように見えるが、実際はどうなのだろう? カップラーメンを食べた後、五丈石との間の平地に下ってみる。今では山頂一帯で3-40人の登山者が歓声を上げている。平地には山梨県の設置した立派な標柱があった。長野側に比べて山梨側は道標などの整備に力が入っているように思える。
今回は廻り目平からのピストンなので、先ほど登ってきた小屋までのガレ場を下る。下りが苦手なわれわれは大きな石が積み重なる上をゆっくりと降りた。小屋に着くとBはトイレを借りて清掃料金をカンパしてきた。アルバイトの若い男女がシュラフにもぐりこんで、日溜りの小屋の屋根で昼寝をきめこんでいる。小屋から中ノ沢までの下りでは、廻り目平から金峰山を目指す多くの登山者とすれ違った。修験者らしい袈裟を羽織った二人組みにも遭遇した。あんな格好で登るのはさぞかし大変だろう。砂防提を過ぎた後もこれから登りにかかる登山者と何組かすれ違った。われわれを小屋泊まりと勘違いしたらしく「どこに泊まったんですか?」と聞かれたりする。今夜は小屋泊まりなのだろう。金峰山小屋には機を見計らって一度宿泊してみたいものだ。瑞牆山と併せて縦走すれば満足できる山旅になるだろう。
西股川沿いの林道歩きに辟易してきた頃、ようやくキャンプサイトが見えてきた。テントの数はさらに増え、100張以上はあるように見えた。駐車している車の数もおびただしい。テントにつくとワインで簡単に祝杯をあげた。今回は晴天に恵まれたこともあって、本当に充実した山旅だった。とくに金峰山や廻り目平キャンプ場周辺の奇怪な岩峰と紅葉の眺めは心深く刻み込まれたのであった。意気揚揚とテントを撤収したわれわれは14:20川端下発のバスを目指して、廻り目平キャンプ場を後にした。
しかし、今回は動物やら昆虫やらが異常に少なかったような気がする。なぜだろう? 小海線で日本酒を飲みながらそんなことを考えた。長野新幹線の中からは、浅間山・妙義山・荒船山などが夕空に黒いシルエットとなって浮かび上がり、次はどの山に登ろうか、と指差してみるのであった。

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