山に行こう 山行記録 木曾駒ケ岳

木曾駒ケ岳

木曾駒ケ岳(標高2956m・長野県)

2008年9月14日(日) 曇りのち晴れ〜2008年9月15日(祝) 晴れ

テント1泊 単独

幕営地:頂上山荘

●ワンポイント

緯度的には南アルプスと同じ位置にある中央アルプス。さすがに森林限界はなかなかやってきませんでした。それだけに1合目からの登り応えは十分。上松、木曽福島、両方のコースとも人は少なく静かな山行が楽しめました。山頂からの展望も抜群。南アルプス、北アルプスの間にある中央アルプスを実感することが出来ます。間近に見える御嶽山の姿も美しいです。

●写真

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●交通

往路JR蒲田22:22 − 品川22:32
品川22:36 − 新宿22:55
京王バス新宿23:30− 中津川IC4:50
タクシー中津川IC5:00 − 中津川駅5:05
JR中津川6:08 − 上松6:55
タクシー上松駅7:07 − アルプス山荘7:19

復路地元の人の車大原上12:40 − 木曽福島駅13:00
京王バス木曽福島駅15:40 − 新宿駅21:28
JR新宿21:36 − 品川21:58
品川22:02 − 蒲田22:12

●山行

9/14(歩行時間7:20)
アルプス山荘7:20-敬神ノ滝8:11-金懸小屋10:08-休憩5分-金懸小屋発10:13-途中休憩10分-八合目12:39-休憩10分-八合目発12:49-木曾前岳14:06-途中休憩10分-玉ノ窪山荘14:20-休憩10分-玉ノ窪山荘発14:30-木曾駒ケ岳山頂15:15-休憩15分-山頂発15:30-頂上山荘15:40
9/15(歩行時5:21)
頂上山荘5:45-木曽駒ヶ岳山頂6:15-休憩15分-山頂発6:30-玉ノ窪山荘7:00-八合目水場7:53-休憩7分-八合目発8:00-七合目避難小屋8:34-休憩6分-七合目発8:40-四合半力水9:44-休憩20分-力水発10:04-林道終点10:29-木曽駒高原スキー場10:59-休憩11分スキー場発11:10-大原上12:05

●記録文

●1日目

登山として木曾駒ケ岳を考えた時に悩むのは、ロープウェイを利用するかどうかだろう。ロープウェイの利用を悪いとは思わないが、何となく後ろめたい気分になりそうなのも事実ではある。今回は空木への縦走などではなく木曾駒オンリーの登山。山を堪能するため、ロープウェイを利用せず、1合目から登ってみることにした。
夜の新宿を歩いて11時過ぎに都庁下の駐車場に着くとどうも様子がおかしい。駐車場が柵で囲われており、人気がないのだ。残っていた旅行会社の人に聞くと、名古屋行きのバスが出るのは、新宿駅の高速バスターミナルだとのこと。「えっ? ここって高速バスターミナルじゃないんだ!?」どうやら、さわやか信州号などとは発着場が違うらしい。仕方ないので急いで駅へと引き返す。なんとか「高速バスターミナル」にたどり着き、名古屋行きのバスに乗ることができた。時間に余裕があるのか、バスは途中でやたらと停車を繰り返す。しかもシートが硬いので、中津川に着くころにはお尻が痛くなっていた。
中津川インターのバス停で、あらかじめ呼んでおいたタクシーに乗り、中津川駅に移動。ここは岐阜県。登山口の上松は長野県。山のための移動とはいえ、我ながらよくやると思う。駅前にはコンビニなどは見当たらない。始発まで1時間待って、がらがらの普通列車に乗車。途中乗ってきた地元の人の話では、今年も紅葉は遅れているらしい。小一時間で上松に到着。無人駅を出ると民家ばかりの駅前はひっそりとしている。タクシーもいないので、電話して呼ぶと、1分(!)で車がやってきた。ドライバーは気さくな人でいろいろ話ができた。木曽側から登る人が少なくなったことや、木曽ヒノキの衰退などさびしい話も多い。
もっと先まで行けるというのを断って、アルプス山荘前で車を降りる。モトクロスのレースでもあるのかバイクが何台かとまっている。登山口はすぐ先の右手。たくさんの石碑や、社がある。あたりは治水工事の最中で、平日は発破も行っているらしい。広い現場からは目指す木曾駒の稜線が見えた。とんがっているのは宝剣岳だろう。いったん山道に入るもすぐに車道に合流。森の中には広場があって神々が祭られていた。道端の石碑の多さといい、どうやらここは信仰の登山道らしい。車道をしばらく行くと、敬神ノ滝へと至る。山荘と社があるが、人の気配はない。沢音を聞きながら登山道に入る。
背の高い森の中の道は暗い。連休だというのに登っている人もいない。独り静かに高度を上げていく。なにかの鳴き声が聞こえたと思ったら、リスが木を駆け上がっていくのが見えた。上方からは時折クルミ大の実が落下してくる。当たれば痛そうだが、幸いにも直撃することはなかった。
下山してくる単独の男性とすれ違う。「上は良かったですか」と聞いたのだが、返事がない。しばらくすると金懸小屋に着いた。さっきの人はここにでも泊まったのだろうか? 小屋前は開けていて展望がよさそう。なかもきれいだ。1Fは10人位は泊まれそうな広さ。2Fもある。トイレは外。すぐ先の金剛水の水量はちょろちょろ程度。飲んでみると甘くて濃い(?)水だった。周囲には落石注意の看板があり上を見上げるといかにも石が落ちてきそうな崖になっていた。
胸突八丁、ラクダの背などと看板があるのを見ながら、斜度を増した道を登っていく。軽装の若い単独行が登りを無視した勢いで降ってくるのをかわす。しばらくすると、開けた個所で三ノ沢岳を見上げることができた。「遠見場」と看板のあるあたりで、今度は中年夫婦が下山してくるのと会話。「ここを登るなんてすごいですねー」と言われる。旦那さんの方が「黒戸尾根と似てる」と言っていた。確かに、この樹林帯の長さといい、数ある宗教的な印といい、一気に山頂に突きあげる道といい、そうかもしれない。気が付いたのは、やはり中央アルプスは南アルプスと同じ緯度にあるのだということ。南アの原始的な感じこそないが、2400m程度ですぐに森林限界に達する北アルプスのあっけらかんとした様とは明らかに違う。
天の岩戸の大石を見て、さらに樹林帯を登る。あたりは針葉樹林だが、まだ森林限界に出る気配はない。七合半を過ぎたあたりから徐々に木々の丈が低くなりハイマツも現れ始めた。さらに登っていくと、広場のような八合目。そのさきから岩稜帯を行くようになり、ようやく視界が開けた。不動明王の像のあるところから木曾前岳への道へと進む。ここで、デイパックを背負った単独の若者がなかなかなる勢いで追いついてきたので、道を譲る。あたりの木から、アブラムシのような謎の緑虫が付着する。シャツやらザックやらに付いたのを払いながら行く。
稜線はガスに見え隠れしている。宝剣岳もだいぶ近づいたが、まだ見上げる角度だ。この高度になって、息も乱れる。休み休み岩場を登っていく。ガンコウランやコケモモの実をちょいとつまむと、甘酸っぱい味が口の中に広がっていく。本当に始まりかけの紅葉を見ながら、木曾前岳へと到着。高度は2800mを超えたが、ガスで展望なし。
木曾前岳から玉ノ窪山荘へと降る。そして歩いているうちに突如ガスが晴れはじめ、あっという間に木曾駒、宝剣岳、三ノ沢岳が一望できるようになった。この景色、今までの苦労が一気に報われる瞬間だ。ギザギザの稜線に突き出た宝剣岳。人がとりついているのが見える。左手の丸い頂が目指す木曾駒ケ岳かな。玉ノ窪山荘からはキノコの話などする声が聞こえてくるが、なんだか人は少なそう。こんなところに泊まってみるのもよさそうだ。
社があるのでお参りし、さらに岩場を登っていく。ここで、先ほど道を譲った若者が降りてきた。「早いですねー」と声をかけると、「荷物軽いですから」と笑顔。日帰りでピストンだそうで。だんだんその若さをうらやましく思い始めている自分がそこにいる...
頂上木曽小屋の前で、小屋の人に声をかけられる。上松から上がってきたと言うと「ごくろうさま」の一言で疲れも癒された。さらに、明日の天気予報は晴れだとか、福島Bコースは数年前まで集団登山をやっていたから道がいいだとか、頂上山荘は今日は臨時休業だけど水とトイレは大丈夫、だとかいろいろ情報をもらう。お二人とも気さくな感じ。テントでなければ泊りたいところだけど...いつか木曾駒に来る時は、まずはこの小屋に泊まることにしよう。
木曽小屋からひと登り。木曾駒ケ岳山頂に到着した。伊那側から登ってくる人が多いらしく、一転してにぎやかとなった。遠望はきかないが、宝剣岳、三ノ沢岳、空木岳への稜線が見える。すぐ下を見下ろすと、今夜のテン場、頂上山荘が見えた。すでに20張りほどのテントがある。社にお参りしてから、降って行った。
小屋はたしかに営業しておらず。あとで宝剣山荘から人が来て、幕営料を徴収するらしい。水はトイレ前の蛇口から無料で得ることができる。ちょっと不衛生な気もするが...なるたけ静かそうな場所を選びテントを設営。暮れ泥む景色を眺めながら、酒を飲む。今回は、到着が遅くなる計画だったので、米炊きは無し。五時半くらいにラーメンを食べ、6時前にシュラフに入る。と、すっかり忘れた頃に、幕営料金の徴収がやってきた(600円也)。わざわざ中岳を超えて...御苦労様です。にぎやかな大集団が到着し、テン場は20時過ぎまでうるさかったが、あまりにあけっぴろげな騒ぎ様に、さほど気にもならず。耳栓をしてそれなりに眠ることができた。
●2日目

4時半起床。ウィダーインゼリーとパンで朝食を済ませテントから顔を出すと空は快晴だった。これを見ると、もう!元気になってしまう!! 気温は4度。朝焼けの中で、日の出を拝み6時前にテン場を後にした。
木曾駒に登ると、そこには予想外の大展望が待っていた。昨日見た中央アルプスの山々は勿論、北アルプス、乗鞍、御嶽山、南アルプス全山そろい踏みの向こうには富士山がひょっこり顔を出している。こんなにいい眺めを得られるとは、想像もしていなかった。とくに、(あたりまえだけど!)中央アルプスが、南アルプスと北アルプスのちょうど間にあるという位置関係を実感。上空の雲と下界の雲海の間に浮かぶそれらの山々が、朝の微妙に変わりゆく色合いの中で幻想的な景色を作り上げていた。風が冷たく寒いのだが、15分のあっという間の滞在だった。
バスの時間を計算しつつ下山開始。木曽小屋を過ぎ、玉ノ窪小屋へと降りる。ここには複数の分岐があり、福島Aコースに行こうかとも迷ったのだが、時間を気にしても疲れそうなので、予定通りBコースへと進んだ。ガレ場の降り、槍を見ながらのぜいたくな下山...
8合目の水場は水量豊富。頭を洗うとあまりに冷たくて脳天がしびれる! 7合目への道は桟道を渡ったり、巨岩をまたいだり。上の方から声が聞こえてくるのは麦草岳あたりの人だろうか? ここまで降るともう展望はない。そしてあっという間に七合目到着。避難小屋は新しく、トイレも風力発電で電気を起こしているようだ。10人程度は泊まれるだろうか? 帳簿を見ると混んでいるのは夏の一時期だけで、ほかの期間の利用者はまばらな感じ。
どんどん樹林帯を降る。次、どこの山に行こうか、など考え始める。力水で小休止。ここの水量は1−2分で500mmペットが満タンになる程度。水は冷たくておいしい。ふとザックを見ると、また緑のアブラムシ君が何匹かお越しになっているので、お引き取りいただく。
さらに降って、沢音が聞こえ始めると、すぐに河原に出て山道は終わった。かなりコースタイムを短縮したようで、これではバス待ちが長くなりそうだ。川を渡って、あとは林道を降って行った。下山後にありがちなこういう道が一番つらい。やがてリフトと照明が見えると木曽駒高原スキー場に着いた。夏のスキー場は、西部劇に出てくるゴーストタウンのようだ。冬は雪に覆われていて見えないはずの建物が、悲しいほどボロい。あたりに群れるカラスを見ながら一服つけた。結局山頂からここまで、誰にも会うことはなかった。
歩いて行くと、ペンションやら山荘やらあるのだが、残念ながら入浴できそうなところはない。木曽駒冷水なる水場が道端にあったので、ここぞとばかりに頭を洗わせてもらった。ふー、きもちいいー!! やがて道は別荘街を抜けていく。それぞれのオーナーが自分の別荘に凝った名前を付けていて面白い。そして小一時間ほどで、大原上のバス停に着いた。バスは1時間後だ。トイレを借りて、体をふき、着替える。酒屋らしきものはない。
ありがたいことに地元の人にバスのことを聞いたのがきっかけで、木曽福島駅まで車に乗せてもらえることになった。そして、上松Aコースは楽だと言われ軽くショックを受ける。登るならBコースの方が面白いらしい。例年ならもうこの辺りも紅葉しているとのことだった。
お礼を言って、木曽福島駅で下車。高速バスの時間まで2時間半もある。バスの支払いをしようと窓口に行くと、コンビニ払いにしていたので窓口では発券できないというトラブル発生。おじさんに言われてセブンイレブンまで行くも、端末がない。そういや、セブンでは支払いできないんだっけ。仕方ないので京王バスに電話して、窓口発券に変えてもらい、事なきを得た。
あとは酒を飲み飲み、放心の時を過ごす。なにか食べ物屋はないかとうろついていると、下の方に「くるまや本店」なる蕎麦屋を発見。もちっとした食感のもりそばとてんぷらで満腹となった。やっとやってきた帰りのバスでは、途中のSAで横川駅の釜めしを購入。なんで横川なんだ? ああ、長野だからか...などと考えながら、一気に平らげてしまった。高速道路は大月付近から小仏までの渋滞で、家に着いたのは10時半だった。やはり帰りは電車の方が正確でいいのかも...

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