山に行こう 山行記録 雲取山

雲取山

標高2017m・東京都/埼玉県/山梨県

1999年4月29日(木) 曇りのち晴れ〜4月30日(金)快晴
テント泊 同行1名

●ワンポイント

東京都最高峰。晴れれば奥秩父がずっと見渡せます。普通は一泊だと思いますが、後山林道を車で入るなど日帰りも可能のようです。三条の湯はシャンプー・石鹸不可なので、長い山行の汗を流すには不向き。丹波山ののめこいの湯、三峰での入浴がお勧め。

●写真

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●交通

往路JR蒲田5:38 − 川崎5:41
川崎5:54 − 立川6:50
立川10:18 − 奥多摩11:35
タクシー奥多摩駅11:37 − 鴨沢登山道分岐(小袖乗越) 12:05

復路ロープウェイ三峰15:30 − 大輪15:38
西武観光バス大輪16:21 − 三峰口16:35
秩父鉄道三峰口17:02 − お花畑17:25
西武鉄道西武秩父17:46 − 池袋19:38
JR池袋19:43 − 蒲田20:30

●山行

1日目(歩行時間3:13)
鴨沢登山道分岐12:07-(休憩)20分-水場13:20-堂所13:43-ブナ坂15:05-奥多摩小屋15:40
2日目(歩行時間4:57)
奥多摩小屋6:20-雲取山頂7:00-(休憩)1時間5分-山頂発8:05-雲取山荘8:30-(休憩)15分-雲取山荘発8:45-大ダワ9:00-芋の木ドッケ9:48-白岩山10:00-白岩小屋10:20-(休憩)20分-白岩小屋発10:40-前白岩山10:56-お清平11:42-(休憩)18分-お清平発12:00-霧藻ヶ峰小屋12:11-三峰神社13:15

●記録文

今年もやってきたゴールデンウィーク。毎年どうしようか思い悩むのだが、30日に休みが取れたので、29-30とテント泊で雲取山登山を計画した。奥多摩の山々は通いやすいせいかいままでにも日帰りでけっこう登っている。しかし、盟主たる雲取に登るのは今回が初めてだ。同行者は会社の同僚のK。彼は去年の夏、シュラフを買って以来一度も実戦に臨んでないので、今回が山中テント泊初めてとなる。前日から意気揚揚と打ち合わせをした。
ところが当日、待ち合わせの立川駅にKが現れれない。家に電話をかけると今起きたところだという。待つことなんと3時間! 季節はずれの寒風が吹きすさぶホームで、すっかりからだが冷え切ってしまった。「まー初めてだから許すか」ということで、改めて計画を練り直すことに。初日は鴨沢から雲取山荘までの予定だったが、町営雲取奥多摩小屋までに変更することになった。
奥多摩駅に到着するころには12時を回っていた。バスを待っている余裕はないのでタクシーに飛び乗る。4/14に御前山へ登りに来たとき満開だった奥多摩湖の桜は、もう完全に散っていた。運転手に勧められて鴨沢から林道をさらに奥に進んだ登山道分岐(小袖乗越)まで行ってもらった。5300円也。これで歩行時間的には30分ほどの短縮になったはずだ。
時間を気にかけつつ歩き始めるが、ちょっと山道に入ったところでいきなり休憩。昼飯を一気に胃袋へ流し込む。ここから堂所へは1時間半でつく予定。さして急でもないだらだら坂が続く。後ろを振り返ると三頭山がでんと座っている。途中の水場はまあまあの水量。軽く顔を洗って気を引き締める。それにしても今日は寒い。季節はずれの寒気が南下しているらしく、4月も終わろうとしている時期の気温ではない。夜の冷え込みがいまから思いやられた。
奇妙な立ち枯れの木がある堂所につくと、御前山と大岳山の遠望がいい。小平地があるのでいざというときはこの辺にも泊まれそうだ。時計を見ると時間は14時前。これなら日暮れ前になんとか奥多摩小屋まではたどり着けそう。
ブナ坂へと向かう道はいままでよりすこし傾斜がきつくなる。しかし息が切れて歩けなくなるほどではなく、この分なら案外楽に奥多摩小屋までつくかな、と思った。七つ石山を左に巻いてブナ坂にたどり着くと、いくつかのグループが休憩していた。ここは十字路になった広場で尾根上に出るのでなんとなくほっとする場所だ。ちょっと休憩ととるが、やはりじっとしていると寒い。
ブナ坂から奥多摩小屋までは、石尾根の明るい防火帯の道だ。後ろには七つ石山、左手には飛竜山が大きい。この辺から見ると飛竜山はあばら骨のようでかっこよく、名前的にもいっぺん登ってみたくなる山だ。今日はまだ雲が残っているので、それ以上の遠望はきかなかった。開放感を堪能しながら五十人平のヘリポートを通過すると、今日の幕営地、町営奥多摩小屋が見えてきた。屋根から薪をたいた煙が立ち昇るのが見え、あたたかみがある。
到着は15:40。日の入りは18時ごろだが、無理して雲取山荘まで行くことはせず、小屋で幕営の登録を済ませ、なるたけ風のあたらないところに設営した。16:30になった。集合からつまづいて一時はどうなることかと思ったが、こうしてたどり着くとうれしさがこみ上げてくる。持参のビールとウィスキーで祝杯をあげた。うまい! の一言があるだけ。しばし夕暮れ時を堪能する。暗くなる前に水場で水を調達したあと、日暮れとともにテントにもぐりこんで夕飯にした。今夜は寒くなりそうだ。風も強い。夜半過ぎまでテントがばたばたいっていた。
強風と芯まで凍る寒さの一夜を過ごして目がさめると、テントの内側には霜がつき、水分を含んだものはみな凍っていた。朝4時。テントから顔を出すとあたりはまだ暗い。外に出ると地面には巨大な霜柱が生長していた。東の空が徐々に赤くなり夜明けを告げる。対面にある富士山や南アルプス・大菩薩・飛竜山の峰峰が薄赤く染まっていく。月が沈み太陽が顔を出すと、あたりの空気は微妙な紅色から透明な冬のそれへと変わっていった。今日はこれ以上ないほどのコンディション。快晴である。
近くに張っていた単独行の人が、ツェルト内においたコッヘルの水が1センチも凍っているのを見せてくれた。寒いわけだ。見まわすと昨夜は結局3組しか幕営者がいなかったらしい。奥多摩小屋もあまりこんでいる様子はなかった。湯を沸かして軽い朝食を済ませ、6:20に撤収完了。雲取山頂を目指した。
山頂までの登りは所々急な場所も現れるが、国師ヶ岳や甲武信岳も見え始め何も苦にならない。あっと言う間の40分で山頂に到着した。山頂からの展望は雄大そのもの。奥秩父の山々はもちろんのこと、遠くは南アルプス・北アルプスまで遠望できた。明治時代に設置された一等三角点のある山頂には、他にも各都県のいろいろな標識がたっていて、その場所が山梨県なら山梨県側、埼玉県なら埼玉県側にあったりして面白い。あたりを見回すと登山者は他に数名。場所も空いてるので、再び腹が減ってきた私はここで昼飯のお茶漬けを食べてしまった。
眺望のよさに後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にする。今日はここから三峰まで4-5時間の歩きだ。明るい山梨側とは違い、埼玉側はうっそうとした原生林だ。ごつごつした木の根の張る急坂を下ると雲取山荘が現れた。山荘には子供の日にちなんでこいのぼりが掲げてあった。ここのトイレは水洗式で、非常に快適。雲取山荘の周りは木が多く狭いので、風がない日なら奥多摩小屋の周りに幕営したほうが広くて快適だろうと思った。
雲取山荘をあとにして、大ダワまではしばしのくだり。そこから芋の木ドッケまでは崩壊気味の登山道を登り返す。巨大な石灰岩の岩塊が所々にあって、秩父に石灰岩が豊富なことがわかる。左手には新緑の和名倉山が薄緑に色づいている。芋の木ドッケ、白岩山のあたりでは野生の鹿に出くわしたが、丹沢の鹿と同様、かなり登山者慣れしていてエサを求めてよってきた。当然何もあげることはできない。ここからしばらくのくだりで白岩小屋に着いた。登山者が出払って静まり返った小屋前には布団が干されている。裏手からは和名倉山と両神山の眺めがよい。浅間山の向こうには北アルプス方面も見える。
お清平までは1時間ほどの下り。ところどころ急なところが現れる。初めて山中泊のKは太ももの後ろ側をいためたようで、休み休み行く事にする。お清平から霧藻ヶ峰小屋までは再び登り返し。これだけアップダウンがあると、三峰側からの登山は鴨沢側からよりも大変だろうと思う。霧藻ヶ峰小屋では日帰り登山者も混じり始め、けっこうな混雑ぶりだった。ここからだんだん登山道もなだらかな下りに変わり、一時間ほどで三峰神社のみやげ物屋までたどり着いた。ふーっよく歩いたー。下山後のビールのうまいことといったら言葉では言い表せない!
店の人に聞くと、三峰神社の奥に温泉があるらしいのでKと二人で行くことにする。歴史を知らないわれわれは、巨大な三峰神社を見て驚いた。こんな山中なのに人出も多い。ツアー客も来ているようだ。奥には参拝者用のホテルが併設されていて、その中の温泉は至極快適なものだった。手ぬぐいお持ち帰りで500円也。
ロープウェイで大輪まで下り、売店でバスの時間を聞くと、バスがくるまでの間いろいろな話を聞かせてくれた。三峰神社には今でこそロープウェイでたくさんの人が上がるが、本来の参道はこの売店前の鳥居から始まっているらしく、ここから歩いて上まで上がるのは簡単な気持ちでは無理だろう。それだけに御利益もあったのだろうけど。また昔はバスで夜乗り付けて、夜を徹して雲取に登るというのがはやった時期もあったらしい。週休2日の影響かそれもなくなったのかな? 今回の雲取登山に思いをはせつつ、売店の人に旬のたらの芽を御馳走になり、日本酒を胃袋に投入し始めたわれわれは、酔い酔いになって東京までの長い帰路についたのでした。

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