山に行こう 山行記録 雲取山(積雪)〜石尾根

雲取山(積雪)〜石尾根

雲取山(標高2017.7m・東京都/埼玉県/山梨県)
七ツ石山(標高1757.3m・東京都/山梨県)
千本ツツジ(標高1704m・東京都)
高丸山(標高1733m・東京都)
日陰名栗峰(標高1725m・東京都)

2010年3月30日(火) 晴れ〜 2010年3月31日(水) 曇り時々晴れ

小屋1泊 単独

奥多摩小屋泊

●ワンポイント

積雪期の雲取山。雪と戯れることができます。気温が低く展望も得られ言うことありません。後半の石尾根は久々の登山のせいか、 尾根のアップダウンでちょいとばてました。奥多摩小屋泊も初めてでしたが...うーんやっぱりここはテントかな。

●写真

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●交通

往路JR蒲田07:05 − 東京07:27
東京07:31 − 青梅08:53
青梅08:56 − 奥多摩09:31
西東京バス奥多摩駅09:40 − 鴨沢10:20

復路京王タクシー峰谷16:40 − 奥多摩駅17:00
JR奥多摩17:21 − 青梅18:00
青梅18:14 − 神田19:26
新橋19:31 − 蒲田19:54

●山行

3/30(歩行時間5:00)
鴨沢10:25-小袖乗越11:00-休憩5分-小袖乗越発11:05-水場12:12-途中休憩20分-七ツ石小屋14:15-休憩10分-七ツ石小屋発14:25-七ツ石山15:16-休憩10分-七ツ石山発15:26-奥多摩小屋16:10
3/31(歩行時間7:08)
奥多摩小屋06:15-途中休憩5分-雲取山山頂7:17-休憩73分-雲取山発8:30-奥多摩小屋9:05-休憩40分-奥多摩小屋発9:45-七ツ石山10:40-休憩10分-七ツ石山発10:50-千本ツツジ11:21-高丸山12:06-休憩5分-高丸山発12:11-日陰名栗峰12:52-休憩10分-日陰名栗峰発13:02-鷹ノ巣山避難小屋13:30-休憩20分-鷹ノ巣山避難小屋発13:50-奥集落15:20-休憩5分-峰谷バス停16:11

●記録文

●1日目

久々の山。ちょっと油断したのだろうか。朝起きて時計を見ると、予定より1時間寝坊していて、急いで準備をして出かけた。奥多摩発鴨沢西行きのバスは午前最後の便になってしまった。平日ということもあって数人程度が乗っているだけだった。そもそも奥多摩という山域のハイシーズンはもうちょっと後だ。今はその前の静寂がある状態。
鴨沢で下車したのは自分ひとり。下山してきたらしい2人の若者がトイレの脇で「また来よう」などと話をしている。最近、若い登山者がちらほら増えてきたのは嬉しいことだ。逆に高齢の登山者は10年前に比べ減少している気がする。鴨沢付近は早春の雰囲気が立ち込めていた。
鴨沢から小袖乗越まで一登り。今年はまだ寒い日が多く、今日も気温が低い。風は冷たいのにすでに汗をかきはじめている。何台か車が止まっているのを見やり、雲取への登山道へと入っていく。植林帯の登りが続く。社跡を過ぎたあたりからちらほら白いものが地面に現れ始めた。石尾根を見上げると真っ白になっているのが見えた。
水場のあたりで3人の若者が休んでいるのと出会う。水は豊富に出ている。汲んで飲んでみるとちょっと苦い味がした。水が泡立っているが若干不純物があるのだろうか? しばらく歩いていくと、谷のほうから鹿の「ぴきー」という鳴き声が聞こえた。また、ガサガサと音がするので何かと思ってみると、でかいサルが真っ赤な顔をして逃げていくところだった。
先ほどのうちの1人が休んでいたので声をかけた。彼は単独でテン泊らしい。しばらく会話し、なんとなく一緒に登ることにする。このあたりからところどころ数センチの雪が道につき始め、高度を上げるにつれて地面を隠す比率があがっていった。
一緒に登っている彼は雲取に登るのは初めてという。そして登山歴1年らしく、まさに20代の頃の自分を見ているような、登山への関心の持ち方だった。この人はきっとこれからどんどん山に傾倒していくのだろう。テント場やコースの情報を教えてあげながら、自分も講釈をたれられる側から、徐々にたれる側にスイッチしていくのかと照れくさく思う。10数年前K君と一緒に来たときに見た堂所の死木は、時の流れが止まったかのようにそのままそこに立っていた。
斜度が急になり、七ツ石への登り。溶けた雪でぬかるんでいるような箇所もある。七つ石小屋に着くと展望が開けた。2人して歓声を上げる。ここまでで14時。今日は奥多摩小屋に泊まることに決めた。彼も奥多摩小屋にテン泊で心が定まったようだ。小屋を見やると人気はない。帰りのタクシーの情報では1年ほど前にご主人がなくなり継ぎ手がなく閉鎖された模様。残念に思う人も多いだろう。
今しばらく登りをこなし石尾根縦走路に出た。石尾根方面には雪がいっぱい詰まっている。明日はこちらに進みたい、という気持ちが強くなる。社を見やりながら一登りで七ツ石山到着。午後だが展望はよい。富士山、南アルプスも見えていた。目指す雲取を見ると、石尾根よりも雪のつき方が少ないように見える。所々、地面が露出していた。
いったんブナ坂へと降る。ここ2-3日で降った雪が氷になっているはずもなく、アイゼンいらずのまま進んでいった。ブナ坂からは、広い防火帯の道を気持ちよく進んでいく。ところどころ展望が得られここまでの疲れも一気に報われる。今日は新しく買ったスカルパの重登山靴で、登りはじめからかかとに感じていたマメもつぶれていたが、痛みも感じない。これは明日さらに悪化して、本当に痛くなるのは家に帰ってからだろう。
奥多摩小屋到着は16時過ぎ。いつもはテントなので、この小屋自体に泊まるのは初めてだ。ここは素泊まりのみ、3500円也。売っているのはビールのみ。本来今日は雲取山荘を予約してあったので、問題は食料なのだが、まあ明日一日だし行動食で食いつなぐことは可能だろう。やばいと思ったらいくらでも下山ルートはある。山荘キャンセルの旨を、小屋の人に連絡してもらうように頼んでおく。
今日の同泊は父娘で来ている2人のみ。ストーブのそばで一緒にビールを飲みながら、山の話などに花を咲かす。部屋は0度。早めに布団を暖めておこうと、布団のある部屋のほうへ行くとかなり寒い。猫に似た動物が1匹逃げていったが、あれは本当に猫だったのだろうか? 布団は凍っており、これが本当に温まるものなのか若干不安に思ったが、まあ一晩屋根があるだけよいというものだろう。隣の親子は完全装備でダウンを着込んだ上に、布団を敷いてさらに寝袋に入るという念の入れようだった。
外に出てテン泊の彼を訪ねる。名前を名乗りあい、酒を飲んだ。酒が入って寒さも忘れ、日暮れを眺めながら山のよさを語り合った。明日6時に一緒に雲取をピストンすることに決めて小屋に戻った。
夜は冷えた。ストーブは消灯の頃消された。体自体はだんだん温まったのだが、足先がどんどん冷えていった。氷の布団に体温を奪われていくのだろう。足をこすったり、ひざ裏にはさんでみたりして、ダメージを受けないように配慮する必要があった。ある程度は眠れたが、12時過ぎからは寒さでウトウトできるくらいだった。
●2日目

5時起床。味噌汁を作ろうと水をコッヘルに注ぐと何か塊が...ヘッドランプで見ると凍った水がシャーベットになってなべの中に小山を作っていた。コンビニのコロッケパンも硬くなって味があまりわからなかった。小屋の窓の向こうにご来光が見えていた。
体を温めるには体を動かすのが一番。6時にテン場に彼を迎えに行く。声をかけるとまだ寝ていたようで、準備ができていないので先に行ってくださいという。まあ、もともとお互い単独なわけだし必要以上に気を使うこともないだろうから先に行くことにする。
小屋前の登り。振り返ると朝焼けに染まった峰々が美しい。雲取で迎える朝はこうでなくては! 独り感嘆の声をあげながら歩いていく。樹林に入ると雪が増え、朝なので凍っているようだった。しばらく行ってすべるので、6本歯のアイゼンをつけて登り始めた。降りてくる人と何人かすれ違った。年配の人ばかりだ。
小雲取を過ぎ、山頂が近づく。山頂の避難小屋が見えた。雲取に登るとき一番気分のよい場所だ。今年もここにやってくることができたことに感謝しながら歩く。そして山頂到着。誰もいない。山荘側から登ってくる気配もない。風も穏やかで震えるような寒さでもなく、ゆっくりと景色を堪能できた。
雪のあるときの雲取は初めてだったが、いっぺんに気に入ってしまった。若干曇天ではあったが、富士山・南アルプスはおろか、北アルプスまでくっきりと見えていたのが印象的だった。家で調べてみると剱・立山あたりが真っ白に見えていたようだ。
独りで1時間半山頂に滞在した。彼も登ってこないようなので下山を開始する。と、降りたすぐのところで、彼が登ってくるのと出会う。景色を見ながら山の感動を分かち合った。私もひそかに目標にしている笊ガ岳だが、彼も登りたいと思っているようなので、その方向を指し示したりする。HPのアドレスを教え彼とはそこで別れた。
小屋に戻り荷物を回収。寡黙な小屋番さんに挨拶をして、小屋を出る。水場で水を補給。水は無雪期と変わらず豊富に出ていた。それにしても、持参したペットボトルの水も、ここの湧き水もみな苦く感じる、寒さで味覚がおかしくなっているのだろうか? 不思議なことだ。水場でヨモギ尾根のほうを見ると、まったくトレースがなかった。雪がある時期はいつにも増してこちらの道を歩く人は少ないのだろう。
10時前に出発。もどかしくなりアイゼンはすぐにはずしてしまった。この後石尾根に進み鷹ノ巣避難小屋から峰谷に降りるのだが、アイゼンが必要と感じる箇所はまったくなかった。むしろすべるのは泥。
七ツ石に登り返す。登りの何人かとすれ違う。この後は、鷹巣の降りまでまったく人に会わなかった。今日は暖かくなるという予報だったが、思ったより日照がなく体感的には昨日と変わらない0度前後の寒さだった。
さて、七ツ石から降り、石尾根へと入っていくと急に雪の量が増した。雲取山頂付近より、こちらの道のほうがよほど雪が多い。おおむね2-30cmの積雪がある。ありがたいことに数日前のものらしいトレースが千本ツツジのほうへ分岐していたので、迷わず尾根道へと入っていった。千本ツツジへのルートは無雪期に歩いているということもあり、とくに不安はない。たくさん雪の詰まった防火帯は明るい。右手には富士山・丹沢・奥多摩の山々が白く見え、開放感抜群だった。
気分をよくして、マキ道を選択する気などこれっぽっちもなく、縦走路へ進んで行った。しかし千本ツツジへまでのルートとは一転、その先はそうは行かなかった。まあ、こちらから眺めた尾根のアップダウンの見かけからしてもそれは予想できたことだったのだが...
いったん降り高丸山へ登り返す。これは急登で雪道、補給不十分ということもありかなり足を使わされた。無雪期コースタイムの1.5倍の時間を要している。帰りのバスの時間も気になり始めた。できれば鷹ノ巣まで足を伸ばしたいと思ってるが...
休憩もそこそこに高丸山からの降り。これがまた登り以上の急斜面の悪場。ところどころ泥が露出していてかなり滑りやすい。慎重に足を運ばせ降りて行った。ひいひいいいながら鞍部にたどり着き、休む間もなく今度は日陰名栗峰への登り返し。これも高丸山への登りと同じく急登。最後は数歩登っては休むようなことを繰り返し、なんとか山頂にたどり着いた。景色は相変わらずよいのだが、それを眺める余裕ももう残っておおらず。あとはバスの時間と地図をにらめっこして、鷹ノ巣は断念して避難小屋から峰谷に下りることに決定した。
30cmほどの湿雪の上をよれよれずぼずぼと降っていき、30分後に鷹ノ巣避難小屋にたどり着いた。七ツ石からの行程、ここまで時間がかかるとは予想外だった。荷物も軽いのに、やはり登山1年のブランクは、かなり大きいのだろう。それでもまだ余裕は見ている。峰谷到着までに日が暮れるということはないだろう。
小屋で20分ほど休憩。チョコバーで最後の補給を済ませる。鷹ノ巣避難小屋は立派な作り。内部も広く清潔だったが、若干空気がこもり、雑多なにおいが立ち込めていた。外にはトイレもあり、少し降った箇所には水も豊富に出ているので、利用者も多いのだろう。外につけられた気温計は5度を示していた。
14時前に小屋を出発。峰谷方面への道を降りすぐの箇所に水場があるのを確認する。足へのダメージが大きく膝やら腿やらが痛い。そろそろと歩を進めていった。途中、雨具をはずしたりしてパッキングをしなおしていると、快調な老人が降ってきて、「思ったより気温が上がらなかったですね」などと会話する。あの勢いならば峰谷橋まで歩く気だろう。自分も初めはそう思っていたが、今日は峰谷バス停までに心変わりしていた。まあ、久々の山だし、余り無理することもあるまい...
徐々に雪が少なくなり、道がつづら折れとなる。しばらくで神社のある箇所を通過。奥多摩の山中にはこうした大きな社の朽ちていくのがよく見かけられる。近くにはバス停まで3.2kmとあった。これは1時間以上かかるな、と見込んだ。
さらによれよれと降って行き、標高900m付近で奥の集落に出た。ほっと一息。スパッツと手袋をはずして、ザックにしまい、少しでも行動の負荷を減らすようにした。そこから林道と山道を交えるようにして、峰谷の集落へは50分を要した。通常なら40分ほどといった道程だろう。
さて、バスも1時間半ないので、タクシーだと思い携帯(AU)を取り出すと電波通じず。近くの商店で釣り場に公衆電話があると聞いていってみるとこれがカードのみのタイプ。いまどき、テレカなど持っているはずもなく、事務所の人に頼むと電話を貸してくれた。いつものことながら、山間の人のやさしさが有難い。御礼にビールを買ってバス停に戻った。
タクシー料金は迎車ということもあり5000円弱。手痛い出費だが、これは我慢して飲み込むしかない。17時に奥多摩駅について、小川スーパーが閉まっているので外の自販機でワンカップを購入。さて帰るかと改札に向かうと、山で出会った彼が、ちょうど電車に乗ろうとしていることろだった。すべてはめぐり合わせ。青梅まで楽しく会話しながら、家路に着いたのだった。

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