山に行こう 山行記録 至仏山〜尾瀬ヶ原〜尾瀬沼

至仏山〜尾瀬ヶ原〜尾瀬沼

至仏山(標高2228m・群馬県)
尾瀬ヶ原(群馬県)
尾瀬沼(群馬県/福島県)

2003年8月23日(土) 晴れ〜8月24日(日) 晴れ
幕営地:山ノ鼻

●写真

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●交通

往路JR蒲田5:40 − 上野6:08
上野6:16 − 高崎8:02
高崎8:20 − 沼田9:07
関越交通沼田駅9:35 − 尾瀬戸倉11:03
尾瀬戸倉11:12 − 鳩待峠11:36

復路関越交通大清水11:40 − 沼田駅13:25
JR沼田13:55 − 高崎14:40
高崎14:51 − 上野16:37
東京16:40 − 蒲田17:08

●山行

1日目(歩行時間3:56)
鳩待峠11:52-オヤマ沢13:03-小至仏山13:49-休憩11分-小至仏山発14:00-至仏山14:28-休憩49分-至仏山発15:17-至仏山荘16:48
2日目(歩行時間5:18)
至仏山荘5:18-途中休憩10分-中田代三叉路6:20-龍宮小屋6:46-休憩19分-龍宮小屋発7:05-見晴7:37-沼尻8:54-途中休憩30分-三平峠下10:08-三平峠10:25-一ノ瀬10:55-大清水11:35

●記録文

●1日目
ずっと天気の悪かった今年の夏だけど、8月も後半になって、やっと晴れ間が続くようになった。家でじっとしているものもったいないので、前回の八ヶ岳から中二日開けて、夏休み最後の2日間で、至仏山に登って尾瀬を散策することにした。土曜ということもあって高崎・沼田への鈍行は行楽客で結構混雑した。沼田からは大清水行きのバスに乗り換え。鈍行から降りて乗る人は少なかったが、その後についた特急で、バスは何人か立ち客が出た状態で出発した。この時期は丁度新宿からの直行バスがないタイミングで、このローカルバスに乗るより仕方なかった。
武尊に行くのか皇海に行くのか、若干名が途中で下車。9割がたは尾瀬戸倉で降りて、鳩待峠行きのバスに乗り換えた。鳩待峠行きのバスは人数分のマイクロバスが用意されるようだった。20分くらい林道を揺られて鳩待峠到着。たくさんのマイクロバスやタクシーが、帰りの登山客を待っている。鳩待山荘も山小屋というより普通のお土産屋だ。その裏手のトイレを拝借。菓子パンをかじったのち、至仏山へと出発した。暑いくらいの夏空だった。
駐車場から始まる登山道は、緩やかに森の中を進んで高度を上げていった。すぐに分かったのだけど、自分のようにテント泊の重い装備で登っている人は誰もおらず、だいたいは20−30リットルくらいの、小さなザックの人ばかり。日帰りか、小屋どまりのライトなハイカーがほとんどなのだろう。
30分ほど登ると意外とあっけなく展望が開けた。始めに日光白根山や皇海山、やがて笠ヶ岳と武尊、そして更に高度を上げると尾瀬ヶ原が眼下に広がってその向こうに燧ヶ岳が見えてきた。しばらくすると木々の間から至仏山のなだらかな稜線が見え隠れするようになった。この辺りから登山道はほとんど木道になった。幅が狭いのですれ違いには少し苦労した。オヤマ沢の水場はにごっていて飲むのは少しためらわれた。上のほうに歩いていくと、登山道を流れている水が、水場に流れ込んでいるようだった。
小さな湿原を過ぎると分岐にたどり着いた。笠ヶ岳方面に進む気持ちにもなったのだけど、やはり初めて尾瀬に来たのだから正道を行こうと決めて、至仏山のほうへと足を向けた。先ほど見えた笠ヶ岳もなかなか綺麗な三角錐だったので、いつか湯の小屋温泉とセットで行ってみたいと思った。
分岐から先は森林限界で、展望が良かった。右手には常に尾瀬ヶ原と燧ヶ岳が見えている。気分のいい登山道だ。木道とつるつるすべる岩場を抜けて高度を上げていった。たどり着いた岩峰は小至仏山。至仏山への岩の稜線がさわやかだった。ずぼらなたとえだけど、ここから見た至仏山はディズニーランドのビッグサンダーマウンテンのようだった。花はちょうどツリガネニンジンやコバギボウシが見ごろだった。秋の紫色が美しかった。
いったん降って至仏山への登り返し。この辺は岩稜帯で、意外と足がとられて進み辛かった。辺りにはタカネトウウチソウやタカネツメクサ、ウメバチソウが咲いていた。至仏山へは30分ほどで到着した。今日は人が少なく数人しかいない。尾瀬ヶ原、燧ヶ岳、会津駒、平ヶ岳、日光白根山、男体山など、午後にはなったけどよい展望を得ることが出来た。ここまで補給しないで来たので、行動食の代わりに日本酒で一服。はらわたにじんわりと効いてきた。
日差しの気持ちよさと展望のよさに1時間弱の山頂滞在。3時過ぎですでに人は誰もいなくなっていた。天気がいいのでゆっくりしたいのだけど、あまり遅くなってもなんなので、山ノ鼻へと下り始めた。山ノ鼻への道は蛇紋岩の岩場でかなり滑りやすい。木道も多いが、雨の日などは大変だろうと思った(後から聞いた話では、この日も一人怪我人が出てヘリで救助されたとのこと)。ただし展望の方は抜群で、だんだん間近に近づいてくる尾瀬ヶ原と正面に横たわる燧の眺めは飽きることがなかった。
樹林に入ってしばらくすると急に尾瀬ヶ原の一角に出た。湿原の中に木道の道が続いている。辺りはお花畑で、傾いた日差しに多くの花が咲き誇っていた(ゴマナ、サワギキョウ、オゼミズギク、アキノキリンソウ、ワレモコウ、イワショウブなど)。
山ノ鼻はそこからすぐで、至仏山荘で幕営の受付をした(800円也)。山荘は民宿に準じるような内容らしく、風呂や売店なども完備していた。こちらはテントなので、幕営地に移動。誰もいないかと思ったら10張くらいはあったので少しほっとした。あたりはヌカカが大発生していて、朝晩刺された。その時は気がつかなかったのだけど、腕やら顔・頭合わせて数十箇所をさされて病院にいく羽目になった。トイレは立派な公衆便所があるし、水場の水もそれなりに出るので不自由はしなかった。
山ノ鼻はビジターセンターや山荘の電気がいつまでもついているので、暗くなってもすぐに横になる気がしない。ビジターセンターでスライド上映会をやるというので参加した(皆風呂に入ってさっぱりしているのに、こちらは汗だくなので少し遠慮がちに)。これはその日に撮った尾瀬の様子を解説してくれるので、花の名前など勉強になった。湿原にはクマが結構出没するらしいことも分かった。
その後は、山荘でワインを購入。ヘッドランプで尾瀬ヶ原に繰り出して、一人宴会をした。星が手にとるように見えた。やがてガスが出てそれが見えなくなると、ホタルが一匹ぼうっと飛んでいくのが見えた。湿原の中を良く見るとホタルの幼虫の青白い明りが淡く見えた。すっかり酔い酔いになったので、テントに帰って寝た。
●2日目
4時半起床。少しガスが出ているようだけれども晴れそうだ。テント場も山荘もまだ完全に目覚め切ってはいない。朝食は途中でとることにして、撤収して出発した。撤収する間にも、かなりの数のヌカカに刺された。
山ノ鼻を出ると木道の上にクマの手形のような濡れた足跡が10数メートルにわたって続いていた。やはり夜か早朝に行動しているのだろうか? スズがないので少しやばいかなとも思ったが、ぼちぼち宿から人が散策しはじめているので、そのまま進んだ。前方には燧の陰があって、木道が霧の湿原の中にずうっと続いていた。振り返るとガスの煙る上に至仏山が黒く盛り上がっていた。
途中、中田代三叉路のベンチで休憩して、朝食にした。再びガスが濃くなってきたけれども、かなり明るいので1時間もしないうちに晴れるだろうという予感はした。辺りを歩く人はまばらだった。混雑する尾瀬のイメージとはかなり違っていた。今日は土日だけど、やはりシーズンを外すとゆっくり楽しめるのだろうと思った。それにしても、重い荷を背負っているのは学生くらいものなので、ここは小屋に泊まって軽装で楽しむところなのだろうと、改めて実感した。
竜宮十字路まで木道を進んだ。足元には数々の花が咲いていたが、特にサワギキョウとオゼミズギクが満開になっていた。散在する池塘が朝日に輝いて美しかった。竜宮小屋につく間にガスがどんどん晴れて、尾瀬ヶ原、至仏山、燧ケ岳をクリアに眺めることが出来た。竜宮十字路のベンチでしばし休憩。さわやかな高原の景色を楽しんだ。
竜宮小屋を通って更に進んだ。湿原の正面に燧ケ岳が近づいてくる。と、ここで湿原の中の何かを観察している一団がいて、何を見ているのだろうと気をとられた瞬間に、不覚にも木道の穴のあいたところに左足を突っ込んでしまい、足を捻挫してしまった。とりあえず我慢すれば何とかなりそうだったので、できるだけ足を固めるようにして先へと進むことにした(これは翌日意外と重症になって腫れてしまい、全治3週間くらいの怪我になってしまった)。
見晴につくとそこは複数の小屋が寄り合ったにぎやかなところで、キャンプ地もかなり広そうだった。ここはヌカカの発生はどうなのだろうか? 
捻挫してあまり余裕もないので見晴を出発して尾瀬沼へと向かう。尾瀬沼へは森の中の緩い登り。道程の半分くらいは木道になっていた。全く展望のないこの登りは意外と長く感じられて、補給を怠ったせいもあるけれど、結構消耗してしまった。しかし途中で燧側から流れ出ていた水を飲むと、これは相当美味しかった。
小さな湿原に出て、閉店している沼尻そばやを通ると景色が開けて尾瀬沼の一角に出た。尾瀬沼は沼というより大きな池で、付近は湿原になっていた。散策すれば気持ちのよさそうなところだ。湿原へのゴミ不法投棄で話題になった長蔵小屋の出店(沼尻休憩所)が繁盛していた。
さらに尾瀬沼を回りこんで三平峠のほうへと向かう。しばらく行った湿原にはモウセンゴケが大量に自生していて、これはちょっと感動ものだった。尾瀬沼の淵を行く道は小さなアップダウンが続いた。捻挫のせいもあるけれども、とにかく補給を怠っていたので、疲労がピークに達していた。沼のほとりの正面に燧が見えるところで大休止。菓子パンとラーメンを食べ、景気付けに余ったワインを飲んで復活した。
出発し三平峠へ向かう。休んでいれば尾瀬沼を渡る風が涼しかったけれども、歩くと日差しがあってかなり汗が出る。三平峠下は売店があって多くのハイカーが休憩していた。ひねくれ者なのかこういうところでは休憩する気にならない。ここまで来ればもう充分堪能したので、休まず下山することにした。樹林の中を三平峠まで登り返して、後は一気の降りだった。
降りは展望も花もなく、ただ暑いだけ。木道や木段の続く中を左のくるぶしをかばいながら慎重に降りて、三平橋に着くと後は林道。これをぶっ飛ばして、一気に大清水到着。売店で買ったビールを飲みきらないうちにすぐにバスがやってきたと思ったらどうやら1本前の便に間に合った様子。バスは座席が半分埋まった程度でゆったりと帰る事が出来た。沼田までの所要時間は往きよりも30分くらい短いようだった。沼田につく頃には、遅れてやってきたヌカカの大被害が腕と頭部に広がり始めて、日焼けと捻挫と、とにかく収拾のつかない状態になっているのに気がついたのはそのときだった。

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