山に行こう 山行記録 酉谷山〜天祖山

酉谷山〜天祖山

酉谷山(標高1718m・東京都/埼玉県)
天祖山(標高1723m・東京都)

2003年4月18日(金) 晴れ〜4月19日(土) 曇り時々晴れ
酉谷山避難小屋1泊 単独行

●写真

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●交通

往路JR蒲田5:27 − 川崎5:30
川崎5:41 − 立川6:35
立川6:50 − 奥多摩8:01
西東京バス奥多摩駅8:10 − 鍾乳洞8:40

復路西東京バス東日原11:35 − 奥多摩駅11:58
JR奥多摩12:26 − 青梅13:03
青梅13:12 − 東京14:35
東京14:38 − 蒲田14:56

●山行(小川谷林道でペンを無くしたため、悪谷出合以降の記録はちょっとアバウト)

1日目(歩行時間5:03)
鍾乳洞バス停8:48-鍾乳洞8:55-日原鍾乳洞見学39分-日原鍾乳洞発9:34-悪谷出合11:55-休憩45分-悪谷出合発12:40-旧酉谷小屋13:35-休憩10分-旧酉谷小屋発13:45-酉谷小屋14:50-休憩10分-酉谷小屋発15:00-酉谷山15:20-休憩10分-酉谷山発15:30-酉谷小屋15:45
2日目(歩行時間4:00)
酉谷小屋発6:00-梯子坂ノ頭7:25-天祖山8:30-休憩15分-天祖山発8:45-八丁橋10:35-東日原10:15

●記録文

●1日目
金曜に休みが取れた。先週の川苔山に引き続き、奥多摩・日原方面に進出することにした。昨年同じくらいの時期に、三ツドッケに登ってけっこう山深さを味わえたのを思い出して、今度は酉谷山を目指すことにした。評判の良い酉谷山避難小屋に泊まるのも楽しみだ。昨年の一杯水の水の出かたからして、酉谷小屋の脇にあるという水場の水量もあてに出来そうだ。
平日なので、バスは東日原の先の鍾乳洞まで出ている。鍾乳洞まで乗ったのは自分のほか一人だけ。ここには閉まった売店があるだけで、トイレや給水施設はなかった。
小川谷沿いにある日原鍾乳洞は誰もおらずひっそりとした様子。次いつ来るかわからないので意を決して窓口まで階段を下りていくと、奥からちゃんと人が出てきたので驚いた。8:30から営業しているようだ。600円支払って荷物をデポして洞内に入る。
鍾乳洞の中は年間を通して10℃とのこと。入ると空気がひんやりとした。内部は予想外に広く、全長数百メートルか1キロくらいはありそう。昔は修験道の修行場になっていたらしい。洞内が煤けている。歴史のある場所なのだ。
迷路のような洞内は旧洞と新洞があって、様々な奇石があった。水琴窟という洞窟では、琴のような音が響いて面白かった。特に新洞にはおなじみのたけのこの様な鍾乳石がある。内部は2−30mの高さがありそうな空洞や、逆に頭がつかえそうなところを急な階段で上下したりする。足元が濡れているので、しっかりした靴でいかないと危ないかもしれない。この日は他に見学者はおらず、恐ろしいような洞窟の雰囲気を堪能することが出来た。見学時間30分程度。
外に出てトイレを借りる。ここで水の補給も出来そうだ。林道に戻って小川谷沿いを歩いていくと、やがてキャンプ場を過ぎて道はダートに変わった。ツツジや芽吹き始めの木々が心地よい。
ゲートをくぐってしばらく行くと、なにやら前方に工事の音が。先週の川乗林道に続いてまたも林道が崩壊とのこと。こちらはより規模が大きく、ダンプカー数台が入って土砂を撤去している模様。お蔭で登山道は迂回を強いられ、小川谷へ数十メートル降下ののち渡渉、対岸を登り降りし再び小川谷を渡渉して林道に上がるというぐったりするような道が設けられていた。まー、完全に通行不可になっていないだけよかったのだけれど...
そこから先、1時間以上の林道歩きは常にダンプカーの往復があって、砂埃と排ガスにやられっぱなしの辛い道のりになってしまった。どうやら土砂を上のほうで捨てているらしい。唯一の救いは途中湧き水で喉を潤すことが出来たことぐらい。やっとの思いでついた土砂の投棄箇所が丁度登山道の入口だった。ここでシャープペンシルをなくしていることに気付き、二度ガックリとする。
悪谷出合までの道は起伏も少なく、これまでとはまるで違った奥深い山の快適な歩みになった。この辺りではハシリドコロがいたるところで花期を迎えていた。ところどころ湧き水もあって、初夏の陽気でほてった体を冷やすのに都合が良かった。沢沿いに猿のひと群れがいて、土をほじくって何かを食べていたが、こちらの熊鈴の音に気がつくと一目散に逃げていった。
悪谷出合で休憩。木橋のある河原で昼飯にすることにする。重いものを先に処理することにし、レトルトカレーを食べる。ここは2つの沢の合流地点で、日差しもからっと暖かく本当に心地よかった。頭がオレンジ色の綺麗な小鳥がいてこれは多分コマドリだったのではないかと思う。
ここからはトリ沢沿いに酉谷山へと詰めていく。道は急な箇所と平坦な箇所が織り交ざっている。途中一箇所支流に迷い込んだので引き返す羽目になった。全体に崩壊や新しい倒木が多く、特に後者は重荷を担いだ身には厄介で、体にいくつかすり傷が出来てしまった。荷をおろさなくては通過できないようなところもあった。
けっこう疲れて、廃屋となった旧酉谷小屋に到着。屋根だけが残っている。酉谷小屋まで1〜1.5時間という表示がある。もうひと頑張りだ。パンをひとつかじって補給しておく。
出発。沢沿いのガレ場を登っていく。徐々に流れが細くなって、ついに水の湧き出している箇所に出た。このコースは本当に水には不自由しない。やがて道は沢筋を離れ、ササ原と針葉樹の間を斜めに登っていくようになる。この雰囲気は一杯水避難小屋の辺りと似ていて、長沢背稜の縦走路が近いことがわかった。途中にシカの死骸がひとつ登山道をふさいでいたので迂回して通った。
酉谷山避難小屋到着。噂どおりのロケーションと小屋の作りの良さにしばし感動。小屋脇の水も今日は水量が豊富だ。飲んでみると甘くて冷たい水が胃袋に染み渡った。目の前には石尾根が春霞の向こうに横たわっていて、明日の朝の展望は期待大だ。ちなみに小屋にあるトイレもとても清潔で、匂いも全くなかったので驚いた。板の間には5名ほどが泊まれそうだ。銀マットや毛布も置いてあった。
小屋に荷物を置いて、酉谷山を往復。辺りはシカの巣窟らしく、いたるところにシカフンが大量に散乱していた。酉谷山への道は明瞭で藪はなかった。ここにはまだ残雪があって、腐った雪が膝までもぐるところもあった。山頂は南面が伐採されていて石尾根方面が望めるようになっていた。ここの一角にも鹿の亡骸があった。ジンを飲んで一杯やっていると死体のほうからハエがたかってくるので、仕方なく山頂を後にした。
小屋に戻って夕暮れまで日本酒を飲んで過ごす。小屋内の気温は15度と暖かかった。夕飯はカップラーメンとパン。豪華ではないけれど、充分な夕食だった。6時半就寝。静かな月夜明りの一夜を過ごすことが出来た。
●2日目
ウグイスの声が目覚ましとなって5時起床。空が白み始めている。窓から見える空には雲があったが、石尾根の向こうに富士山や丹沢山塊が浮かび上がっている。これが徐々に赤く染まる様子を見ながら、味噌汁にもち投入の朝食をとった。気温は10℃で寒いことはなかった。
7時くらいまではゆっくり景色を眺めているつもりだったのだけど、日が翳り始めたので撤収し、11時半のバスを目指して6時に出発。今日のコースは天祖山経由で日原に戻る、というルートだ。
長沢背稜はアップダウンの少ない快適な道だった。ただし、道にはまだ残雪があって、何ヶ所か歩きにくいところがあった。また、道脇の木はことごとく動物の爪あとがあって、原始の雰囲気を感じさせられた。右手の樹間からは時折埼玉方面の展望が開けて、両神山や浅間山が墓場のようなかすみの上に黒い山陰を浮かび上がらせていた。左手には目指す天祖山の山肌が石灰石の採掘で灰色の段々になっているのが間近に見えた。笹ヤブの間をコガラがちょんちょん跳ね回っていた。
梯子坂ノ頭到着。ここで長沢背稜の縦走路ともお別れ。芋ノ木ドッケから雲取山方面への道に後ろ髪をひかれながら天祖山へと向かう。分岐からすぐの箇所に水場があったが、地面から水が染み出ている程度で、飲用にするには何らかの工夫が必要と思う。
次第に雲取谷側から吹き上げてくる風が強くなりはじめて、空気が湿っぽく生暖かくなった。予報より早めに天気が崩れ始めているようだ。この辺りの道の雪のぬかるみでゆだんしてずっこけて、岩角でしこたま膝を打った。ジャージが破けてしまった。道は開けた尾根筋で、右手には芋ノ木ドッケと雲取山が重なり合って見えた。山肌にはまだ白いものが残っている。この辺りからだと、雲取よりも芋ノ木ドッケの方が立派に見えた。
梯子坂ノクビレから天祖山への昇りは雪のついた急坂。意外と苦労を強いられる。着いた天祖山には天祖神社があって、その前が広場のようになっていた。展望は特に良くない。ごみが埋まっていてちょっと汚い感じがする。ここで休憩して、菓子パンをかじる。
少し降ると会所に着いた。神社の社務所のようなところで、裏手にトイレもあった。ここからは富士山をかすみの向こうに眺めることが出来た。ここにもビンやらカンやらを埋めた跡があって、ちょっと気分が悪い。地面の下はごみだらけかもしれない。地図にある水場は見つからず、水とはドラム缶に溜めた雨水のことかもしれないと思った。
しばらく行くと奥多摩ではめずらしい岩のヤセ尾根になった。しかし、それも長くは続かずあとは長い樹林帯の降り。途中今回の山行で初めての登山者とすれ違う。再びツツジの花が咲き始め、標高が下がってきたことがわかる。落石かと思った音がまたも猿の群れだった。道端に湧き水があって、喉を潤すことが出来た。登山道が尾根から右にそれる箇所を見過ごして迷い込み、15分ほど時間をロスした。
天祖山から八丁橋まで1:50。だいぶ時間がかかってしまった。林道をぶっ飛ばして、東日原へと急ぐ。東日原に着いたのは11:15。酒を買ってのんびりするのに丁度いいタイミングだった。やってきたバスに乗り、酔い酔いになりながら、桜とツツジと新緑の混ざった日原の山を後にした。

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