山に行こう 山行記録 焼岳・上高地

焼岳・上高地

焼岳(標高2455m・岐阜県/長野県)

2006年8月5日(土) 晴れ〜2005年8月6日(土) 晴れ
前夜東京発 中の湯温泉旅館1泊 焼岳は単独、上高地は同行1名

●ワンポイント

焼岳は日帰りで手軽に登れる北アルプスの山。北アルプス南部のすばらしい展望台です。温泉とセットにすればさらに充実するでしょう。 火山のためか、標高のわりに樹林帯が少ないです。夏は日干しになるので、気をつけましょう。 上高地ハイキング、大正池や河童橋の眺めは観光客がたくさん訪れるだけのことはあります。 ところどころに茶店やホテルもあるので、食べるほうも楽しみです。

●写真

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●交通

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往路JR蒲田21:27 − 東京21:48
東京21:51 − 新宿22:06
さわやか信州号新宿高速バスターミナル23:00 − 帝国ホテル前5:47

復路松本電鉄バス上高地バスターミナル15:15 − 松本バスターミナル16:50
京王バス松本バスターミナル17:20 − 新宿駅22:00
JR新宿22:12 − 神田22:23
神田22:29 − 蒲田22:52

●山行

1日目(歩行時間5:26)
帝国ホテル5:47-田代橋5:58-休憩22分-田代橋発6:20-登山口6:30-焼岳小屋8:28-休憩30分-焼岳小屋発8:58- 途中休憩20分-焼岳山頂10:25-休憩185分-山頂発13:30-釜トンネル(中の湯)15:30

●記録文

●1日目

今年の夏休みは、南アルプスで知り合ったフランス人のA君と立山&剱に行こうという計画になっていた。先週の土日に雲取山へ、久々のテント山行にでかけ、足回りの確認は出来ていた。しかし、その前に別の山で、もう少し高度をあげておこうと思って、北アルプス前衛の山、焼岳に夜行日帰りで出かける計画を立てた。家でその話をしているうちに、現地待ち合わせで温泉泊まるのもいいね、という話になり、あとからBが中の湯温泉旅館まで来ることになった。1泊してくつろいだ後、翌日は上高地でハイキングを楽しもうという、ちょっとは夏休みらしい計画となった。
さわやか信州号上高地行き、23時新宿発。今日は8号車(!)まで増発された。道中2度のトイレ休憩で起こされるので、何とか仮眠できた程度。5時には沢渡に着いた。そういえば去年はここから乗鞍方面へ行ったっけ...寝ボケ眼でバスを乗り換えながらそんなことを考えた。気温13度。長袖を着ていないと寒い。
釜トンネルから先、上高地へは初の進出。ぽっかりと口を開けた勾配のあるトンネルが、異次元へとつながる空間のように思える。抜けた先、バスの車窓から見えた看板にいきなり纏リスを発見。今日の山行を祝福してくれているかのようだ。帝国ホテル前で下車すると、赤いホテルの屋根の向こうに穂高の山稜が垣間見え、気分も高まってきた。
緩く下り、途中でトイレを借用。朝早いのだけど、あたりにはハイカーや梓川沿いを散策する人が多い。田代橋からは朝日を受けた焼岳がまぶしい。反対には、逆光になった穂高が透明な空気の中に見えた。渡った先の前穂高登山口で軽く朝食をとり、ストレッチののち出発した。しばらくは林道歩き。見上げると焼岳の山頂部が木々の向こうにちらほらと見え隠れしている。まだ空気はひんやりとしているのだけど、登山口で長袖を脱いだ。
まずは笹の刈り払われた緩い登り。しばらくすると、木の根や岩石などをまたぎながらいくようになり、少し勾配がきつくなった。途中、千葉から来た単独の人と会話を交わし、焼岳小屋までは、この人と前後して歩いていった。途中左手がガレ場で展望が開けた箇所から、焼岳を見上げることが出来た。青空の中にごつごつとしたその姿が朝日を受けて浮かび上がっていた。今日は本当に最高の天気、快晴だ。
さらに登っていくと、小さな梯子や、ちょっとゆがんでヤバそうに見える鉄製の桟道を通過。さらに複数のはしごを組み合わせた垂直10m程度の梯子が現れ、慎重に一歩一歩登っていった。登った先の草原でニッコウキスゲが咲いていて心を和ませてくれる。
森林限界、というより噴火で森が焼かれたのだろうか。しばらくすると草原状の斜面に白骨化した木々の目立つあたりを登るようになった。日差しを直接受けるのでさすがに暑い。しかし、左手に見える焼岳の迫力はすばらしい。遠くには中央アルプスも見えるようだ。振り返ると霞沢岳がちょっと南アルプス的な森の濃い色合いで座っていて、梓川と大正池が眼下に横たわっていた。
草原の斜面を上り詰めると焼岳小屋。小屋前からは焼岳が見える。ここでパンをかじって早い昼食にした。西穂方面に少し進むと、樹間に笠が見えた。西穂から歩いてきた人も何人かいた。
小屋を出発。すぐに展望が開け、10分も登ると展望台に出た。振り返ると穂高が見える。その左手には笠ヶ岳への稜線が雪をおいていて美しい。遠くには白山も見える。白山はさらに雪が多い。もちろん正面には、どどーんという迫力で焼岳が鎮座している。展望台にいた長野在住かつ関西訛の同年輩の人に写真を撮ってもらう。
快晴の焼岳を眼前に眺めながらいったん中尾峠まで降る。そこからは焼岳の岩峰を仰ぎながらの登り。ざれた急斜面で息も苦しい。3-40分も登ると、噴気孔の音が聞こえてきた。火山の息吹にしばし聞きいる。
岩場をのり越えて南峰と北峰の間のコルに着いた。現在登れるのは北峰だけ。見上げると、ものすごい数の登山者が山頂から降ってくる。50人くらいいるだろうか、ツアーのようだ。途中で、転んでいる人が何人かいた。危なっかしい歩みを15分以上待って、登りにかかった。ものすごい音で蒸気を噴出す噴気孔の脇をとおり、山頂へと岩場を攀じていった。数分で山頂到着。
山頂からは、今まで見えなかった槍、そして穂高、笠が本当に手にとるように見えた。鷲羽、水晶、野口五郎なども見えているようだ。反対側を振り返ると、間近に乗鞍も見えた。とにかく、視界のクリアさに感動。ついつい酒も進むひと時だった。
山頂滞在3時間。Bには15時に中の湯に着くと言ってあるので、名残を惜しみつつ下山開始。午後になっても、まだほとんどの山々が見えていた。南峰とのコルから少し降ると、美しいコバルトブルーの池がある(これは梓川の色と同じだ)。そしてその隣には、荒々しい火口が天に向けて口を開けていた。
さすがに午後になるとかなり暑い。焼岳を振り返りつつ名残を惜しみながら、中の湯へと降っていく。道は30分ほどガレ場が続き歩きにくかった。徐々に草木も増え始めるが、なかなか樹林帯にならず日干し状態が続く。左手には穂高と霞沢岳の眺めがよい。途中でいかにも疲労困憊した同年輩の人がいた。聞くと水もないというので、家の水道水だが、少し分けて上げた。このあたり、木製の梯子がいくつかつづいた。
さらに降っていくと、樹林帯となりようやく日陰を得ることができた。地形図どおり、少し平坦な地帯を歩いた。そして再び降り。どんどん降っていく。「あれ?」と思って地図を見、GPSの標高を見るとすでに1900m。ひょっとすると、中の湯温泉への分岐を見落としたのではないか? しかし、間違っていたとしても釜トンネルには着くし、と思ってどんどん進んでいった。
すると途中で会った年配の登山者に、分岐は梯子のあたりで、とうに過ぎてしまったということを教えてもらった。やっぱり...まぁ、このまま釜トンネルまで降って、中の湯売店で頼んで宿まで送ってもらえばいいや! ということで、そこからは樹林帯の一気の降り。30分ほどで国道に降りついた。大量に沢水の流れる脇から国道に出て、左手に降っていくと釜トンネル前に出た。途中にはト伝(ぼくでん)の湯の小屋があって、ここに入るには中の湯温泉旅館から鍵を借りる必要があるらしかった。こんな国道脇ではちょっと落ち着かない気もするが...
中の湯の売店で旅館に宿泊する旨を告げ、無料の送迎車を頼んだ。焼岳から間違えてこちらの道に降りてきてしまったという話を売店のご主人にすると、この釜トンネルへの道は、旅館に行く道よりも少し悪い、ということを教えてもらった。しかし、降りていて悪いと感じたところはなかったので、上の道はよっぽど整備されているのだろうと思った。ご主人から、Bが先にここから旅館に向かった、ということも教えてもらった。ちょっと遅くなってしまったので心配しているだろうか...
車に乗ってつづら折れの道を登り、中の湯温泉旅館到着。旅館は最近改築されたようで、とてもきれいだった。部屋まで案内してもらう途中で、ちょうど廊下を歩いてきたBと会うことができた。
宿からは穂高や霞沢岳が見える。宿泊客は焼岳の登山口ということもあって、登山客が半分以上を占めている模様。温泉に入っていても、山の自慢話に花が咲いていた。夕食は、客が多いということで、部屋食になった。岩魚骨酒と馬刺しを追加で頼んで、満腹になって寝た。夜は星空がきれいだった。Bが起きて露天に入りに行ったのだけど、風呂は明るすぎて星は見えなかったそうだ。翌朝、8時に宿の車で大正池まで送ってもらうことにした。
●2日目

朝風呂と朝食を済ませ、宿の車で大正池に到着。まずは帰りのバスの整理券を確保するため、上高地バスターミナルまでバスで移動した。混雑する日は整理券がないと、バスに乗れないことがあるらしい。出札で聞くと、松本行きのバスは2本しかない模様(ほかは新島々で電車乗り換え)。帰りの松本発の高速バスを予約してあったので、それに間に合う便の整理券をもらった。これで安心して歩き回ることができる。チップ制のトイレを借用し出発した。
まずは、河童橋まで歩いていった。森の中を抜けるとすぐに着いた。河童橋からは穂高と焼岳の眺めがいい。いや、眺めがいいだけでなく、梓川とその両岸の景色とあいまって、すばらしいロケーションになっていた。まだ朝早いのだが、ハイカーや観光客で混雑している。
橋を渡り、右岸から明神池に向かった。梓川の清流沿いの道を山々や森、沢の流れを眺めながら、気持ちよく歩いていくことができた。道はゆるいアップダウンがあり、湿地帯では木道が整備されていた。
1時間強で嘉門次小屋に到着。登山者やハイカーで大混雑している。すぐ先にある明神池は拝観料1名300円也。このときの受付のバイト神主(?)の態度が猛烈に悪く、Bとともに気分を悪くする。そのせいもたぶんにあるかもしれないが、中も拝観料を払うほどの池ではない。正直言って梓川から見る景色のほうがぜんぜんよい。まー、話の種に一度くらいなら入ってもいいと思うが、私は2度と入りません(あくまで個人的感想です。念のため。)。唯一よかったのは、中でかわいい鴨の姿が見れたこと。動物に罪はなし...
明神池を出る。信心深い(?)われわれは穂高神社奥宮に参拝して、その場を後にした。ここらで大休止をとろう。明神橋の見える河畔に腰を下ろし、嘉門次小屋で買っておいたビールで乾杯した。日差しがかなり強い。梓川に入って水遊びしている観光客の姿もあった。自分も裸足になって、梓川の流れを眺めた。日陰に入ってくつろいでいると、実に心地がよかった。
明神橋を渡り、明神館へ。公衆トイレを借用する。上高地一帯は観光地というだけあって、山とは違いトイレには困らない。明神館前には、休憩する登山者が大勢いた。左岸沿いの道は、入山下山に多く利用されているようだ。
明神館からは、緩い降りが続いた。こちらはまさに林道といった類の道で、観光として歩くなら右岸の変化のあるコースのほうがよいと思う。小一時間歩くと、小梨平の広いキャンプ場。時間が時間のせいか、あまりテントの数は多くない。そこから一投足で河童橋。昼になって混雑がひどくなっている。今日は昨日より、空気の透明度が悪く穂高や焼岳は少しかすみ始めていた。
おなかの空いたわれわれは、バスターミナルからさらに上高地帝国ホテルへと歩を進めた。林間の道を15分ほどで、独特の赤い屋根をした帝国ホテルにたどり着いた。バスターミナルから先、登山者風の人はほとんどおらず、歩いているのは観光客ばかりとなった。ちょっと浮いてきたひげ面の自分の姿を気にしつつも、Bとともにアルペンローゼというレストランに入る。店内は混雑していて狭かったが、おいしいものを食べることができた。値段は言うまでもなく高い...出てきた料理をあっというまに平らげ、グリンデルワルトという喫茶に移動。Bはケーキセット、私はハーブティーをたのんでくつろいだ。たまにはこういう贅沢もよい。ハイキングの途中の「茶店」としてはまったく最高級だ。
帝国ホテルを後にし、田代橋へと向かう。昨日の朝、焼岳に向かって歩き始めた道だ。田代橋で焼岳を見ると靄と逆光で、黒い塊にしか見えなかった。やはり、こういった場所の散策は朝に限る。そこから大正池まで左岸を歩いていく。かなり暑い。すれ違う観光客の数も多い。梓川では鴨がお茶目な姿を観光客に披露していた。餌をやる人がいるのか、かなり人慣れしている。
30分ほどで田代沼到着。ワタスゲの草原の向こうに穂高が見えた。田代沼は沼というより、流れの一部分。水中の藻がきれいなのだが、暑くてあまり楽しむ余裕がない。地図に書いてあるモウセンゴケなどの湿地の植物も見つけることができなかった。日陰を求めて、移動を開始する。
ふらふらしながら大正沼のほとりに到着。ここも観光客だらけだ。とりあえず正面に見える焼岳の写真を撮って、すぐに日陰に入る(ここは朝来ればすばらしい焼岳の写真が撮影できるに違いない)。流木に腰を下ろして、Bが松本で買ってきた赤ワインを飲んだ。酒が気付けになり、少し元気が出てくる。鴨やら鳩やらが餌を求めてあたりを周回していた。
大正池からは、再びバスで上高地バスターミナルまで移動。バスの数はかなり多く数分に1本は通過している。見ると上高地から去っていくバスはどれもほぼ満員状態だった。バスターミナルに着くと、そこは観光地から帰る人たちで大混雑。百人とも、二百人とも思える行列がバス停にできていた。整理券のあるわれわれはバスに乗るまで、チューハイを飲みながらくつろぐことができた。
松本までは、特に混雑もなく1時間半程度で到着。17:20発の新宿行きのバスまで30分の待ち時間があるので、エスパでパンやら寿司やら、道中の食べ物とお土産を購入。さて、時間となってバスに乗ろうとすると、夏休みの混雑で到着は1.5時間程度遅れるというアナウンスが...その話のとおり、小仏トンネル前が25km渋滞。キッカリ一時間半遅れて、新宿到着は夜の10時となってしまった...

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