2004年7月16日(金) 晴れ〜2004年7月17日(土) 晴れ
小屋1泊 単独
宿泊:蛭ヶ岳山荘
●写真
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●交通
往路 | JR | 蒲田6:11 − 横浜6:27 |
相模鉄道 | 横浜6:39 − 海老名7:11 | |
小田急 | 海老名7:15 − 新松田7:48 | |
富士急バス | 新松田駅8:10 − 西丹沢自然教室9:20 |
復路 | 神奈中バス | 大倉14:08 − 渋沢駅14:23 |
小田急 | 渋沢14:31 − 海老名14:55 | |
相模鉄道 | 海老名15:13 − 横浜15:44 | |
JR | 横浜15:51 − 蒲田16:12 |
●山行
1日目(歩行時間5:58) |
西丹沢自然教室9:28-ゴーラ沢出合10:13-休憩5分-ゴーラ沢出合発10:18-展望園地11:17-休憩8分-展望園地発11:25-途中休憩20分-檜洞丸13:00-休憩15分-金山谷乗越13:49-神ノ川乗越14:24-休憩5分-神ノ川乗越発14:29-臼ヶ岳15:04-休憩13分-臼ヶ岳発15:17-途中休憩10分-蛭ヶ岳16:42 |
2日目(歩行時間4:32) |
蛭ヶ岳6:00-途中休憩15分-棚沢ノ頭6:54-途中休憩10分-水汲み20分-丹沢山8:18-休憩9分-丹沢山発8:27-途中休憩35分-塔ノ岳10:00-休憩24分-塔ノ岳発10:24-花立山荘10:45-休憩13分-花立山荘発10:58-休憩40分-大倉13:08 |
●記録文
●1日目 夏休みに数日の縦走をするには、やはり事前にどこかで1泊くらいして、体の状態を確認しておかないと不安だ。はじめは武尊山で天泊でもするつもりだったのだが、新潟が集中豪雨だったり、関東も雷雨がちだったりするので、群馬方面に進出するのは断念。天気のよさそうな東京・神奈川近辺ということで、まだ歩いていなかった檜洞丸〜蛭ヶ岳間に出かけることにした。ここは丹沢主稜と呼ばれる稜線だ。 |
丹沢はテント禁止という事なので、今回は蛭ヶ岳山荘に泊まることにする。前日に電話を入れると、この時期は空いているとのこと。一応予約をして欲しいと言われたので、素泊まりで予約を入れた。小屋の水は高価なので(2リットル1000円)、家から4リットル担いで行くことにした。減った分は、神ノ川乗越の水場で補給する予定。2日目は蛭ヶ岳から丹沢主脈を辿って大倉に下山する。3年前大倉から東野まで1日で歩いたときに、稜線の景色に感動して、いつか小屋にでも泊まってゆっくり歩いてみたいなぁ、と思っていた次第。2日目の朝を迎えるのが楽しみだ。そういえば、有人の営業小屋に泊まるのもじつは今回が初めてだったりする。 |
今日は平日。西丹沢行きのバスは1/3程度の乗車率で出発。登山者は自分以外に2人。閑散とした西丹沢自然教室を出発した。日差しが強くすぐに汗がにじみ出てくる。GWに来たときはあれほど大量のテントで埋まっていたオートキャンプ場も、今日はその面影もない。 |
車道から右手に入り、ゴーラ沢までは緩い登り。イグチ系のキノコをいくつか見かける。オニイグチらしいものもあったが、もう腐り始めている。立派な木橋のかかったゴーラ沢を渡り本格的な登りが始まった。今日の荷は15K。特に重いとは感じないのだが、とにかく暑い。30分も登るともうばててきて、展望園地に着くころには、ヘロヘロになっていた。傍らに咲いているホタルブクロを見ながら、羊羹をかじる。パンも食べようとしたのだが、暑さの為かいまいち喉を通らない。 |
そこから山頂までの道はなかなかの急坂で、暑さに朦朧としながら登る羽目になった。所々休憩をとらずにいられない。水の減りも早い。ブナノキが増え、石棚山稜からの道を合わせるとようやく檜洞丸の山頂らしい雰囲気になった。山頂付近のバイケイソウはもう枯れていて、今はマルバダケブキが黄色い花をつけ始めていた。山頂の木道付近で小動物を目撃。逃げ送れた一匹は木道下に隠れたので、至近距離で写真をとることが出来た。家で調べると、それはアナグマという動物だった。食事中を邪魔してしまったようだ。あまりしつこく写真を撮りすぎたせいか、ブホッと威嚇されてしまった。 |
山頂手前には日帰りの登山者が休んでいた。本日初めての登山者だ。山頂で昼飯休憩にしたのだが、やはりパンが思うように喉を通らない。喉が渇いているせいだろうか? こんなことなら、おにぎりかラーメンにしておけばよかった。ここまででコースタイムを30分以上オーバー。この調子だと蛭ヶ岳まで3時間は見ておかないと危ないな、と計算するが、今日は本当に疲弊しきっていて、歩きとおせるか少し不安になる。 |
ここから先は未知の山道。山頂を少し降ったところに青ヶ岳山荘があった。今日は無人でひっそりとしている。裏手にはトイレもあるようだ。前方に目指す蛭ヶ岳が遠くかすんで見える。これからこの暑さの中をあそこまで行くのかと思うとなんだか眩暈がするようだ。そこから先、マルバダケブキの中を急降下する。そんなにくだらなくても、というくらい降る。地図を見ると標高にして400m位の落差だ。金山谷乗越付近は崩壊しているとのことだったのでどんな感じだろうと思っていたが、整備はされており危険なところは無かった。 |
神ノ川乗越へはいったん小ピークを越える。足が重く息も乱れた。10分おきくらいに休憩を取りながら行く。ベンチを見つけると思わず倒れこむように仰向けになった。何故こうも疲労するのか訳がわからない。暑さ、シャリバテ、トレーニング不足。30も半ばになったせいという考えがふと頭をよぎる。しばらくすると落ち着いてきて、辺りを覗う余裕も出た。森の雰囲気もいいし、青空に浮かぶ雲も最高だ。そういえばここまですれ違った人は2人だけ。本当に静かな道だ。 |
またもや下った先が神ノ川乗越で、時間はすでに14:30。このペースだと蛭ヶ岳まであと2時間、ひょっとするとそれ以上みなくてはならないだろう。小屋泊まりで17時を過ぎるような事は避けたいので、あまりゆっくり休憩も取っていられない。水場によるのも断念して、そのまま進むことにした。 |
臼が岳までは200mの登り返し。この辺りはとにかく気力で進んだと思う。あまり記憶が無い。山頂に着くと正面に蛭ヶ岳がその全容を現した。鞍部からは斜度のある登りに見える。ここからいったん下って、300m強の標高差だった。カロリーメイトを水で無理やり胃袋に流し込んで出発した。 |
ミカゲ沢ノ頭を越えて、奈落に着くと蛭ヶ岳への急斜面が始まった。辺りはノバラやアザミが多い。こんな斜面に刺のある植物が大量に生えているとは、精神的にも参ってしまう。しかし、これが本日最後の登り。頑張り続ければ山頂に着くのだ、と自分を言い聞かせて少しづつ高度を上げていった。いや、むしろ斜度がきつい分高度を稼ぐのは容易だったのかもしれない。小さな岩場を攀じたのち、だんだん斜度が緩くなるとついに山頂の一角にたどり着いた。あまりにへろへろで到着するのもなんなので、息を整えてからゴールイン。今となってはそんな余裕があったことがおかしいが、何のことは無い、山頂に人影はなかった。 |
寝っ転がって休みたい衝動をこらえて小屋に直行。すぐ後から2人組みの年配の夫婦が到着した。記帳を済ませ(素泊まり4000円也)、気さくそうなご主人に部屋を案内して貰う。今日の宿泊は10人にもならないので、好きなところに寝てよい、と言われる。部屋には先客の中年夫婦がいるだけ。消灯は8時。小屋内の炊事場もあるのだが、気分よく外で晩餐にすることにした。 |
一人だけで蛭ヶ岳山頂を占有し、持参のビールで乾杯。しかし、どうも胃袋の調子が悪く、炭酸のノリが悪い。さっさと飲み干して、次は菊水を取り出してぐびぐびとやる。やはりこんな体調のときは日本酒だ。糖分の補給にもなる。ひとしきり酔っ払って落ち着いてくると、辺りの景色も良く見えてきた。巨大な入道雲が海側に見える。今頃Bの勤め先の辺りは雷雨かもしれない。反対側には富士山がかすんで見える。その手前には今日歩いてきた檜洞丸から蛭ヶ岳までの稜線も見える。随分アップダウンの激しい道を歩いたんだなぁ、と思う。後ろ手には明日歩く丹沢山から塔ノ岳の尾根道も見える。眼下には、熊木沢の河原が荒涼と横たわっていた。 |
明日も晴れることを願いながら、もう一本菊水をあけると、小屋の主人が犬を連れて散歩に来た。わざわざ犬を連れてくるところがほほえましい。だいぶ酔っ払ったところで、夕飯にした。レトルトのハヤシライスの予定だったのだが、食欲が出なかったので、途中で拾ったタマゴタケを味噌汁にして、ご飯を流し込むように食べた。 |
夕暮れを堪能して小屋に戻ると、すでに部屋は消灯されていた。早くもいびきをかいている人もいる。手近の布団をささっとひいて、酔っ払った勢いですぐに熟睡モードに入った。0時過ぎに眼がさめるとしばらく目が冴えて眠れなかった。2時位にトイレに立ったついでに、外に出てみた。 |
空は快晴で、月が無く、しばらくすると目がなれて天の川が見えた。星が多すぎて、かえって星座がよく分からない。カシオペアとはくちょう座はなんとか見つけることが出来た。その間、流れ星を2個と、人工衛星がまとまって3つ飛んで行くのを目撃した。驚いたのは、正面の山の中腹に斜めに連なる明りで、それが富士山の山小屋が5合目から山頂まで点々とあるからだと気付くのにしばらくかかった。しばしわれを忘れて、それらが明滅する様を眺めていた。横浜の夜景が見えるというので小屋の裏手に回ると、犬にほえられてそれ以上近寄ることが出来なかった。 |
●2日目 4時半起床。軽くストレッチをして、小屋のトイレを借用。トイレは室内にあって山小屋のトイレとしては最高級の清潔さ。手動水洗なの以外は、家のトイレと変わらない。ペーパーも完備だ。 |
外に出て朝食にする。昨日の余り米で、梅干茶漬け。コッヘルにタマゴタケの香りがほのかに残っている。小屋の主人がまた犬と一緒に散歩に来た。本当に条件のいい日は朝日が富士山にあたって、真っ赤になるという。今日も景色はいいが四季折々すばらしい丹沢をここでは味わうことが出来る、とちょっぴり嬉しそうに語って、すぐに朝食の準備をしに戻って行った。 |
辺りは薄明から、朝の清澄な時間帯へと移っていく。正面に富士山が端正な姿を見せている。その右奥に南アルプスの稜線が黒く浮かび上がっている。奥秩父の主脈も雲取から甲武信・国師・金峰あたりまで、ずうっと連なって見えた。2000m以下の山々は、低層に澱んだ雲海の上に墨絵のように浮かび上がっていた。愛鷹山や箱根の山が、雲間に浮かぶ島々のようだ。刻々と変わり行く山の風景に、しばし時間を忘れて眺めいった。 |
朝のひと時を充分堪能して6時に小屋を出発。なんだか後ろ髪をひかれる思いだ。犬と一緒に小屋を写真に収めようと裏手に回るとまたも吠えられてしまう。そろそろ覚えてほしいなぁ... |
蛭ヶ岳からは気持ちのよいササ原をいったん降って鬼ヶ岩へ登り返す。これから歩く主脈の稜線が美しい。急いで歩くのはもったいないので、ゆっくり景色を堪能しながら行く。日が昇るにつれ、辺りの景色がよりクリアになる。夏にしては珍しい透明度だ。富士山の山肌が赤茶けているのもはっきりと見えた。鬼ヶ岩で蛭ヶ岳を振り返る。丸々とした緑の山頂に小屋がちょこんと乗っかっているのが見える。さっきまでそこにいたのだと思うと、なんだかうずくような気持ちになるものだ。 |
展望のいいササ原の稜線を休み休み行く。辺りはさながら緑の空中庭園のようだ。細かいアップダウンがあるが、今日はちっとも気にならない。この辺り、3年前に来たときはガスで何も見えなかった。それはそれで幻想的でよかったのだけど、やはり晴れて展望があると、最高に気持ちのいいものだ。やはり泊まりでもう一度来る価値のある場所だった。こうした朝を迎えることが、山に足を向かわせてしまうひとつの理由なのだろうと思う。 |
不動の峰を過ぎて東屋に着いた。前回はここにツェルトを張って何日も粘っている仙人みたいな人がいたっけ...今日は誰もおらず辺りはひっそりとしている。ザックを置いて水を汲みに出かけた。急斜面を5分ほどで沢の源流に水が湧き出ている箇所に出た。500mlのペットボトル2本を満たすのに数分かかった。水を飲んでみると多少酸味があって、これは酸性雨のせいなのか、人や動物の汚染のせいなのか、それとも気のせいか...気にすると飲めなくなるのであまり考えないことにした。 |
道はいったん下って、丹沢山へと登り返す。丹沢山は樹林の山頂で展望は無い...と思っていたのだが、今日は樹間から富士山が姿を見せていた。傍らに以前は無かった清川村のド派手な看板がたっている。宮ヶ瀬方面に少し様子を見に入ると、ここもバイケイソウは終わっていて、マルバダケブキが開花の時期を迎えていた。 |
竜ヶ馬場まで進み、ベンチで大休止をとることにした。塔ノ岳から先、人が増えるのは分かっているので、ここでゆっくりしてから下山するのだ。じっとしていれば、気持ちのよい風が流れてくる。靴下を脱いで横になると、これまた気分がいい。ストレッチをしたり、ごろごろしたりして、贅沢な時間をぐずぐずと過ごした。 |
出発しようとすると、塩水橋から上がってきたという年配の男性がやってきた。大月から車で来たということで、今日は丹沢山〜塔ノ岳のピストンだそうだ。前後して出発するが、すぐ先で一緒になって塔ノ岳まで話しながら歩いた。この辺りになると、塔ノ岳から来る人と何組かすれ違うようになった。 |
塔ノ岳に着いたのは10時。この時間になっても、展望はそれなりにクリアだった。夏にしてはかなり条件に恵まれている。現在の山頂は10人ほどの人出。しかし、こんな暑い日でも続々と人が上がってくるようだ。日陰が無いので長時間の滞在は厳しい。最後の展望を楽しんで、一晩を過ごした蛭ヶ岳を振り返る。いつかまた泊まりに行くような予感を覚えつつ下山開始。 |
気温が上昇したせいか、降りながら大汗をかいていた。この尾根は環境破壊で禿山になっていて、日差しをさえぎるものが無い。花立山荘でかき氷を食べて(400円也)一度体を冷却する。これはちょっとした幸せだ。やはりこの暑さなので、売れ行きも好調のようだ。そこから先、階段の尾根を降って行くと、徐々に2日目の疲労が足に出始めた。所々休みながら行く。こんな日でも、昇ってくる登山者が多いのには驚いた。皆暑さに喘ぎながら必死の形相になっている。 |
途中、休憩中に話し掛けた中年の男性にお茶をご馳走になり、それがきっかけで大倉まで一緒に歩いた。東丹沢のヒルの話をすると、この人も野草やキノコをとりに行く時に食われたことがあるとのこと。生息数はかなり増えている模様だ。茅ヶ崎に住んでいるというこの男性、歩きながら口笛を吹くという個性的な方で、再びどこかですれ違えばきっと気がつくに違いない。 |
大倉到着。足がもう筋肉痛になり始めて痛い。車道をくだり、大倉山の家で男性と別れて風呂に入った(300円也)。家の風呂を少し大きくしたような浴室だが、さっぱり汗を洗い流すことが出来た。バス停に行く途中の店でお土産に梅干を購入。こんな店、前からあったっけ? 後はチューハイやらワンカップやらを飲んでバスに乗り、酔い酔いになって帰路に着いた。いつも気になっていた海老名駅の立ち食いで、カレーうどんも食べることが出来た。 |
軽い気持ちで出かけた今回の山行だったが、1日目は思わぬ苦行を強いられた。丹沢は普段日帰りで行くことが多いのだけど、山中に一泊することで、また違った一面を発見できる奥の深い山だと分かった。 |